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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))

【一般演題】
卵巣腫瘍2
肺梗塞と高カルシウム血症を合併した卵巣明細胞腺癌の一例


種市 明代, 藤原 寛行, 竹井 裕二, 嵯峨 泰, 泉 章夫, 大和田 倫孝, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科


 卵巣明細胞腺癌は他の組織型に比べ,血栓症や高カルシウム血症を起こしやすいといわれている.我々は両者を合併し,治療に苦慮した症例を経験したので報告する.症例は55歳,2経妊2経産.既往歴,家族歴に特記事項なし.下腹部腫瘤感を主訴に2003年9月近医を受診し,卵巣癌の疑いで当科を紹介となった.初診時臍高に達する卵巣腫瘍が認められ,超音波検査では充実性が主体のmixed patternを呈していた.また下肢エコーにてDVTが確認されたため,10月IVC filterが挿入された.しかし挿入翌日肺梗塞を発症し,院内にて心肺停止となった.直ちに心肺蘇生術が施行され,ICUに入室し,体外循環導入,カテーテル下肺動脈血栓除去術,抗凝固療法が施行された.その結果全身状態は徐々に改善し,翌日体外循環離脱,16日後人工呼吸器離脱し,意識障害を残すことなく11月ICUを退室した.その後,腫瘍により惹起されたと思われるparathyroid hormone releasing peptide(PTHrP)の高値(8.8pmol/l)がみられ,高カルシウム血症となり,そのためADH不応性の腎性尿崩症が引き起こされた.ビスホスフォネート製剤投与により全身状態の改善がみられたため,2004年1月手術に踏み切った.左卵巣は23cm大,右卵巣は正常大,腹腔内には著明な播種が認められた.両側付属器,大網,腹膜播種巣の切除を施行した.組織型は卵巣明細胞腺癌でIIIc期と診断された.術後PTHrPの低下がみられ(1.0pmol/l以下),また周術期に新たな肺梗塞は発症しなかった.現在は抗凝固療法を継続し,術後化学療法を予定している.卵巣明細胞腺癌に重篤な肺梗塞と高カルシウム血症を合併した症例を経験した.文献的考察を加え報告する.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2) 147-147, 2004


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