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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍3 成熟嚢胞性奇形腫より発生した脂腺系腫瘍の1例
川瀬 里衣子1), 鴨井 青龍1), 朝倉 禎史1), 小木 三郎1), 五十嵐 健治1), 渡辺 美千明1), 河村 堯1), 竹下 俊行2)
日本医科大学付属千葉北総病院産婦人科1), 日本医科大学付属病院産婦人科2)
成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化は扁平上皮癌が一般的であるが,甲状腺癌や呼吸器系の腺癌,さらには悪性黒色腫など様々なものが発生することが知られている.今回,閉経妊婦に発生した卵巣成熟嚢胞性奇形腫に脂腺系腫瘍の合併した希有なを症例を経験したので若干の考察をふまえて報告したい.症例は53歳の3回経産婦.下腹痛が契機となって,小児頭大の付属器腫瘍が発見された.CA125,CA19-9,SCC,CEA,CA72-4などの腫瘍マーカーに明らかな異常高値を認めなかったが,超音波検査やMRIにて,通常の皮様嚢腫の所見のほか,壁の一部に乳頭状の壁肥厚が認められた.開腹時,肥厚した大網に被われた約15cm径の左卵巣腫瘍が認められた.切除した腫瘍の術中迅速診断にて一部扁平上皮癌の可能性があり,大網切除を追加した.問題となった乳頭状の充実部はN/C比の高い類円形のBasalioid細胞が胞巣状構造を呈しながら増殖しており,核分裂像も容易に認められた.また,胞巣状構造のなかに,脂腺細胞と考えられる空胞細胞が散見された.以上より,成熟嚢胞性奇形腫の脂腺系腫瘍への悪性転化と診断し,術後全身化学療法を3コース行なった後,現在外来にて経過観察中である.本腫瘍は,粘液細胞を介在する重層扁平上皮構造や,melanocyteの集束,さらに神経細胞に分化したところが認められた.皮様嚢腫の分化を考える上で,病理組織学的に興味深い症例であった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
152-152, 2004
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