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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍3 肺病変との関連が疑われた卵巣皮様嚢腫の悪性転化症例
板坂 俊典, 秋谷 文, 鈴木 麻水, 藤田 聡子, 真島 洋子, 渡辺 浩二, 酒見 智子, 塩田 恭子, 斉藤 理恵, 木村 俊夫, 栗下 昌弘, 佐藤 孝道
聖路加国際病院産婦人科
卵巣皮様嚢腫の悪性転化は非常に稀であり,進行癌である場合の予後はきわめて不良であることが知られている.今回我々は子宮筋腫,卵巣皮様嚢腫の術前診断にて開腹したところ既に癌性腹膜炎の状態であった悪性転化症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.患者は52才で1回経妊1回人工妊娠中絶があった他は既往歴,家族歴に特記すべきことはなかった.但し1日40本20年間に及ぶ喫煙歴があった.平成15年7月に健診で胸部X線の異常を指摘され近医を受診,肺結核の疑いで抗結核剤の服用を開始.9月より下腹部痛が出現,経腹超音波で子宮筋腫と卵巣嚢腫が認められたため手術を勧められ10月28日に当科初診となった.内診及び経膣超音波にて径4.3cmの筋腫と9.3×8.0cmの卵巣嚢腫が認められた.卵巣嚢腫はMRIで皮様嚢腫とされたが悪性を疑わせる所見はなかった.腫瘍マーカーではCA125のみ65U/mlと高値を呈したが術前にはSCCは測定されなかった.当院呼吸器内科でTBLBを施行,結核は否定され肺嚢胞症と診断,手術には問題ないとされた.よって12月7日に入院し,翌8日に開腹手術を行ったところ径2cmを超える腹膜播種が認められた.右卵巣原発の腫瘍は周囲組織と強固に癒着していた.子宮全摘,両側付属器摘出,大網部分切除,播種病巣の生検が施行された.術後SBOとなり保存的に治療されたが,その後直腸腟瘻が出現し人工肛門造設術を受けた.現在,術後3ヶ月で脳転移が疑われ胸水貯留も増悪,急速に症状の悪化をみている.なお,最終病理診断は右卵巣皮様嚢腫から発生したと考えられる扁平上皮癌であった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
153-153, 2004
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