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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍3 妊娠性卵巣絨毛癌の一例
錦見 恭子1), 飯塚 美徳1), 永井 雄一郎2), 木下 一志3), 松井 英雄1), 関谷 宗英1)
千葉大学産婦人科1), 千葉大学病理2), 川鉄千葉病院産婦人科3)
卵巣絨毛癌は大変まれな疾患であり,発生学的に妊娠性と非妊娠性に分類される.今回,我々は卵巣に限局した純粋な妊娠性絨毛癌の症例を経験したので報告する.症例は38歳,2経妊1経産.最終月経は2003年4月.6月28日から不正性器出血が続いたため,7月22日近医を受診.妊娠反応陽性,経膣超音波検査にて子宮腔内に胎嚢を認めず,右卵巣に44×24mmの嚢胞性腫瘤を認めた.尿中hCGは7月22日939mIU/ml,7月29日6,037mIU/ml,7月30日35,320mIU/mlと著明に上昇した.子宮外妊娠を強く疑い7月30日,腹腔鏡下にて手術,右卵巣妊娠の診断で右卵巣部分切除術を施行した.病理検査では単核でcytotrophoblastに類似した細胞と多核でsyncytiotrophoblastに類似した細胞からなるtwo cell patternを認め,核は異型性が強く,クロマチンが豊富であり,卵巣絨毛癌と診断した.腫瘍は黄体嚢胞に接しており妊娠性が疑われた.また,腫瘍の大きさは直径9mmほどで今までの卵巣絨毛癌の報告例のなかで最小であった.8月13日当科紹介受診,骨盤部MRI,胸部CTでは残存病変,肺の転移巣認めず,9月11日腹式単純子宮全摘術と両側付属器摘出術を施行した.病理検査では摘出した子宮および両側付属器に腫瘍の残存を認めなかった.術後化学療法としてMEA療法(MTX,VP-16,ACT-D)を施行中である.患者および夫の末梢血,さらに絨毛癌よりDNAを抽出し,D18S70locusでの多型解析をした.絨毛癌のアリルひとつは,夫のアリル由来であり,遺伝学的に妊娠性である事を証明した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
154-154, 2004
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