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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍3 卵管癌が転移し化生したと考えられる腹膜癌肉腫の一例
福井 詩子, 工藤 一弥, 戸出 健彦, 藤井 和之, 笹 秀典, 高野 政志, 喜多 恒和, 菊池 義公
防衛医科大学校産婦人科
卵管癌の腹膜転移部位において癌肉腫に化生したと考えられる症例を経験したので報告する.症例は65歳,2経妊2経産,閉経49歳.不正性器出血を主訴に受診.内膜細胞診classIV(adenocarcinoma).MRIで右骨盤内に8×5×4cm大のT1,T2強調画像ともに低信号の内部構造不均一な充実性腫瘍を認めた.腫瘍マーカーはCA125 109,CA15-3 176.7と上昇し,卵巣癌又は卵管癌を疑い手術を行った.腫瘍は回盲部の腸間膜から後腹膜に存在し,骨盤漏斗靱帯と一部連続していたが,附属器とは直接連続していなかった.迅速病理診断でこの腫瘍が腺癌と診断され,単純子宮全摘,両側附属器切除,腫瘍摘出,大網部分切除術を施行した.肉眼的には対側の左卵管に1cm大の結節性腫瘤を認めたが,両側卵巣,子宮は正常であった.最終病理診断は左卵管原発の卵管癌(serous adenocarcinoma,G3)であった.骨盤内の腫瘍は,卵管癌に類似した癌細胞の他に,間質にSMA・vimentin陽性の間葉系の異型細胞が存在し,癌肉腫の像を呈していたが,間葉系の細胞は特定の肉腫成分への分化はみられず,卵管癌が播種性転移したmetaplastic carcinomaと考えられた.大網に転移を認めず,腹水細胞診はclassIIで,卵管癌FIGOstageIIcと診断された.術後,TJ療法を開始した.癌が転移先で化生し癌肉腫様となることは乳癌等での報告はあるが,卵管癌の報告はない.癌肉腫に対する治療は確立されておらず,卵管癌の化生による癌肉腫に対してTJ療法が奏効するか今後の検討が必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
155-155, 2004
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