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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍3 保存的治療が奏効した骨盤内放線菌症の1例
花田 信継1), 吉野 修2), 山田 学2), 久具 宏司1), 小島 俊行1), 矢野 哲1), 上妻 志郎1), 武谷 雄二1)
東京大学産婦人科1), 日立製作所日立総合病院産婦人科2)
骨盤内放線菌症は悪性腫瘍との鑑別に苦慮することが多い.今回,放線菌症と診断し保存的に治療しえた症例を経験したので報告する.症例は,43歳4経妊4経産で,6年前よりIUDを使用.便秘・下腹部痛・発熱・倦怠感を主訴に近医外科を受診した.下部消化管内視鏡にて,壁外性圧迫による結腸内腔の狭小化を認め,骨盤内腫瘍が疑われたため当科へ紹介となった.内診上,左付属器領域に圧痛を伴う不整形の超手拳大腫瘤を触知,子宮との境界は不明瞭であった.経腟超音波にて,左付属器領域に充実部とソーセージ様の低エコー域よりなる80×62×60mmの腫瘤を認め,正常な卵巣は認められなかった.造影CT・MRIでは子宮左方の7×6cmの造影される充実性腫瘤が肥厚したS状結腸を圧排していた.白血球数13900,CRP6.2,腫瘍マーカーはCA125が42U/mlと軽度上昇を認める以外は陰性であった.子宮頸部・内膜細胞診の両者から放線菌を多数認めた.以上より,骨盤内充実性腫瘤は放線菌による卵管卵巣膿瘍の可能性が高いと考えられた.IUDを抜去,ABPC4g/日の点滴投与16日間にて,便秘症状・発熱・疼痛・倦怠感が改善し,画像上の腫瘤縮小を認めた.以後ABPC2g/日の内服投与とした.92日目の腟分泌物培養より嫌気性菌を認め,106日目よりCLDM450mg/日を併用した.148日目に腫瘤は消失し抗生剤投与を終了.細胞診再検にて放線菌は検出されず,腸管の肥厚所見も消失,症状再燃なく現在経過観察中である.諸家の報告のごとくIUD挿入中に発症した付属器腫瘤病変においては骨盤内放線菌症を疑うことが必要と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
156-156, 2004
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