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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
手術 巨大卵巣腫瘍の一例
田中 晶, 茂庭 将彦, 加賀 俊章, 中村 友紀, 沼野 由記, 川島 正久, 北村 公也, 大井 豪一, 小林 浩, 金山 尚裕
浜松医科大学産婦人科
巨大卵巣腫瘍は,術中・術後に循環器・呼吸器系合併症を生じやすく,厳重な管理が必要となる.今回われわれは,重量約22kgの卵巣腫瘍症例を経験したので報告する.症例は57歳1経妊1経産.家族歴,既往歴は特記すべき事項なし.10年前より腹部膨満感を自覚するも放置していた.平成15年12月末より腹部膨満による下腹痛が悪化,身動きもとれない状態になったため平成16年1月5日に当院救急外来を受診した.身長163cm,体重53kg,腹囲103cm,著明なるいそうを認めた.卵巣腫瘍は剣状突起下にまで及ぶ巨大なもので,CT,超音波断層法では骨盤腔から上腹部までを占める多房性の嚢胞性腫瘍を認め,胸部単純X線写真では腫瘍による圧迫のための横隔膜の挙上が認められた.腫瘍マーカーはCA12-5が262U/ml,CEAが16.6ng/mlと高値を示した.1月7日,硬膜外麻酔を併用した全身麻酔下で開腹術を施行.術中迅速組織診断は境界悪性のため,手術は腹式子宮単純全摘術,両側付属器摘出術を行った.術中腫瘍内容の吸引に伴い30〜40mmHgの血圧低下が見られたが他の所見には変化が認められなかった.患者は10年前より腹部膨満のためほとんど歩行せず,下肢筋力の低下もみられ,術後にリハビリテーションを必要とした.病理組織診断の結果は,境界悪性粘液性嚢胞腺腫であった.近年診断技術の進歩および健康管理への関心の高まりにより,1900年代後半よりこの様な巨大卵巣腫瘍の症例報告は減少しているが,患者が腹部腫瘤に気づいても怖くて病院を受診しないため,巨大になるまで放置される症例も散見される.文献的な考察も加えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
162-162, 2004
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