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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
手術 ポピドンヨード接触皮膚炎により帝王切開創部に広範な皮膚潰瘍を生じた1例
田畑 きく江, 芦田 敬, 大野 珠美, 山崎 悠紀, 岡 賢二, 金井 誠, 小西 郁生
信州大学産婦人科
帝王切開後の創部感染の頻度は2%前後といわれ,そのほとんどが抗生剤投与などにより改善する場合が多い.今回我々は,帝王切開後に創部感染を発症し,同部位から広範な皮膚潰瘍を生じ,その原因としてポピドンヨード(PVP-I)による消毒が考えられた症例を経験した.症例は29歳の初産婦であり,前病院へ妊婦健診のため通院中であった.妊娠36週3日の外来受診時,高血圧(160/107)とタンパク尿(3+)を認めたため,同病院に入院となり,翌日妊娠中毒症の適応で帝王切開を施行された.術後2日目夜より発熱を認め,手術創部から膿の排出が認められ,創部が離開した.創部には術後より連日PVP-Iで消毒を続けていたが,創周囲に発赤やびらんを認め,潰瘍を形成し徐々に増悪した.膿培養では緑膿菌を認めた.抗生剤を変更したところ.術後9日目には解熱したが,潰瘍はその後も拡大したため,PVP-Iによる接触皮膚炎を疑い,使用を中止した.その後,全身の浮腫と多量の胸水を認めたため,全身管理を目的に術後13日目に当院に救急搬送となった.入院時,創部を中心とする広範な領域に壊死組織を伴う皮膚潰瘍を認め.その周囲には発赤を伴っていた.腹部CTでは潰瘍は筋膜までには至ってなかった.創部は生食での洗浄およびスルファジアジン銀クリームを塗布し経過観察したところ,潰瘍の拡大は止まり,周囲の発赤も消失し,肉芽を形成し始めた.また利尿剤により,胸水は減少し,全身状態は改善した.術後26日目には,病変部全面は肉芽で覆われた.手術後に創部感染が周囲に広がり潰瘍形成を伴った場合には,消毒薬による接触皮膚炎も念頭におく必要があると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
166-166, 2004
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