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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
不妊・不育/子宮奇形 造血幹細胞移植後の妊娠例からみた妊孕性の検討
渡邊 広是, 末岡 浩, 渡邉 昌紀, 前田 太郎, 田島 博人, 橋場 剛士, 浅田 弘法, 岩田 壮吉, 文 聖恩, 久慈 直昭, 吉村 泰典, 野澤 志朗
慶應義塾大学産婦人科
造血幹細胞移植bone marrow transplantation(BMT)は重篤な血液疾患に対して高い治療効果を来す治療法として確立されてきたが,その一方で生殖細胞への影響も強く,妊孕性がほぼ失われることが知られている.特にBMTの為に行われた被爆放射線によって卵巣機能の不可逆的退行変化が妊孕性を消失させる.骨髄異形成症候群(MDS)合併妊娠の報告は本邦で十数例報告されているが,我々は17歳でMDSと診断され,造血幹細胞移植・全身放射線照射・化学療法施行後に早発卵巣不全(POF)と診断され,ホルモン療法中に自然妊娠した症例を経験しその過程を分析した.31歳で,MDS治療後の無月経のため来院,BBTはmonophasicでLH 31.5mIU/ml,FSH 62.9mIU/ml,E215pg/ml,のためKaufmann療法を開始した.35歳で結婚するが挙児希望なく,FSH 69.8mIU/mlと高値であることから,排卵誘発は断念しHRT療法を継続していたが,食欲不振で来院し経腟超音波にて胎児心拍が確認された.現在,血液学的には治癒の状態で妊娠継続に問題はなく,妊娠18週で経過良好である.BMT,放射線照射後に妊娠・分娩に到る非常に稀な例の報告があり,流産,低出生体重児の割合は多少増加するが,奇形率の有意な上昇は報告されていない.本症例では,総放射線照射量は12Gy(Total body irradiation 6分割,2Gy×6)で卵巣機能低下,排卵障害は残ったが,その後の治療過程でHRTを継続していたことから,妊孕の環境は維持されたと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
172-172, 2004
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