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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩1 拡張型心筋症合併妊娠の1例
沼尾 彰子, 池田 泰裕, 菊地 信三, 天野 完
北里大学産婦人科
拡張型心筋症は心筋の変性疾患で,心室内腔の著明な拡大と心筋収縮機能の著しい低下をきたし,うっ血性心不全を呈する予後不良な疾患である.妊娠,分娩による循環動態の著しい変化により,心不全をきたし母体死亡に至る危険性が高いため,妊娠継続は禁忌との見解もみられる.今回われわれは,拡張型心筋症合併妊娠の1例を経験したので文献的考察を含め報告する.【症例】35歳,0経妊0経産.22歳時に拡張型心筋症と診断.NYHAI°であり,βブロッカー(ロプレソール120mg)を内服していた.妊娠6週に当科初診,挙児希望が強いため,内科と協議の上妊娠,分娩時の危険性を十分に説明したうえで妊娠継続とした.妊娠中の管理として心電図,心臓超音波検査,BNP(心房性Na利尿ペプチド)計測を定期的に行なったが特に異常は認められなかった.37週1日に呼吸苦と体重増加傾向,蛋白尿を認めたため,管理目的で入院となったが,安静,食事療法にて症状は軽快した.38週2日に陣発したため分娩中の血圧,循環動態の変動を考慮し,オピオイドを用いた持続脊椎麻酔による分娩管理を行った.分娩時は母体の動脈圧経時的モニタリング,持続的中心静脈圧測定,SpO2測定を行ない,経時的(分娩促進前,分娩促進後,子宮口7cm開大時,子宮口全開大時,分娩後)に心臓超音波検査による心機能を評価したが大きな変化は認められなかった.胎児管理は胎児心拍陣痛図に加え,胎児パルスオキシメトリーによる胎児動脈血酸素飽和度モニタリングを行い選択的鉗子分娩により2310gの男児(Ap. S 8/9,Ua-pH 7.37)を娩出した.分娩後の母児の経過は良好である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
177-177, 2004
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