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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩1 プロテインC欠乏症合併妊娠の一例
小林 裕美子1), 福田 貴則1), 林 博1), 杉本 公平1), 江崎 敬2), 平間 正規1), 窪田 尚弘1), 田中 忠夫2)
富士市立中央病院産婦人科1), 東京慈恵会医科大学付属病院産婦人科2)
プロテインC(PC)は重要な生理的凝固抑制因子のひとつである.先天性PC欠乏症は常染色体優性遺伝をする疾患で,ヘテロ接合体では血中PC濃度が正常の30〜50%に低下しており,そのため過凝固状態を呈することになり,四肢の深部静脈血栓症や肺梗塞などの血栓症を起こしてくる.また,妊娠をきっかけとして血栓を発症しやすい事でも知られており,妊娠に合併した場合,胎盤梗塞を形成し子宮内胎児死亡や子宮内胎児発育遅延などを起こしやすい.今回我々は,妊娠前よりPC欠乏症と診断されていた症例で,妊娠期間中,ヘパリノイド製剤であるダナパロイドナトリウムを連日皮下投与し,血栓症を発症することなく生児を得た一例を経験したので,これに文献的考察を加え報告する.症例は19歳.0経妊0経産.父親がPC欠乏症による全身血栓症により死亡し,そのときに患者自身も精査し,PC欠乏症のヘテロ接合体であることが判明.平成15年1月,無月経を主訴に当科受診し,妊娠5週の診断となる.妊娠14週より本人および家族に未承認薬であることに関しインフォームド・コンセントを得,院内の倫理委員会の了承を得たうえで,ダナバロイドナトリウム1Aの隔日皮下投与を開始.妊娠21週時に,TATの上昇見られたため,以降は連日皮下投与とした.その後の妊娠期間中はTATやD-ダイマーの上昇は認めたものの,血栓症は発症することなく経過し,妊娠40週1日に2940gの男児を正常分娩にて娩出した.出生後5日目よりワーファリン投与開始とし,分娩後TATやD-ダイマーの値は速やかに改善したため,分娩一ヵ月後よりワーファリン投与を中止とした.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
181-181, 2004
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