|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩2 All-trans Retinoic AcidおよびIdarubicinを用いた化学療法を行った急性前骨髄球性白血病合併妊娠の一例
服部 純尚, 宮越 敬, 松本 直, 石本 人士, 田中 守, 吉村 泰典, 野澤 志朗
慶應義塾大学産婦人科
近年,急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)においてAll-trans Retinoic Acid(ATRA)を用いた分化誘導療法が,良好な成績を収めている.我々は妊娠中期に発症し化学療法を行ったAPLの一例を経験したので,文献的考察も加えて報告する.(症例)34歳,3経妊2経産.四肢の紫斑を契機に施行した検査にて,末梢血中に芽球を認め,妊娠26週4日に白血病疑いにて当院産婦人科に紹介受診となった.来院時,四肢及び腰腹部に著明な紫斑を認めた.超音波検査では児に異常を認めず,胎児心拍モニタリングはreassuring patternであった.骨髄穿刺にて著明な過形成骨髄およびペルオキシダーゼ染色強陽性の前骨髄球を多数認め,APLと診断された.既にDICを呈していたため,母体救命を最優先としATRAとIdarubicinを用いた化学療法を開始した.DICは数日で改善し,APLの治療経過は順調であった.妊娠28週4日に尿蛋白(3.6g/日),胎動減少,および胎児心拍モニタリングで基線細変動の消失,遅発一過性徐脈を認めた.超音波検査では臍帯動脈血流速度波形にて拡張期血流の逆流を認めた.以上よりnon-reassuring fetal statusと診断し,帝王切開術による急速遂娩とした.児は968g,女児,アプガースコアは2/5点(1/5分値)で,気管内挿管の後に人工呼吸器管理となった.母体の術後経過は良好で,APLは化学療法により寛解し,現在地固め療法を施行中である.(考察)本症例では,APL合併妊娠に対し化学療法を行った.患者および家族の理解,および当院血液内科との連携により迅速な治療を行ったことが母体救命につながったものと考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
182-182, 2004
|