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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩2 鼠径ヘルニアとの鑑別が困難であった円靭帯静脈瘤合併妊娠の一例
中川 圭介, 江成 太志, 金子 英介, 川村 久恵, 山藤 晶子, 上里 忠和, 大岡 史子, 五十嵐 敏雄, 梁 善光
帝京大学附属市原病院産婦人科
立位で増悪する鼠径部膨隆は通常,鼠径ヘルニアとして診断される.今回我々は鼠径ヘルニア合併妊娠との鑑別が困難であった円靭帯静脈瘤合併妊娠の一例を経験したので報告する.症例は28歳の1回経産婦.前回は臨床的CPDのため帝王切開を施行している.近医で妊婦健診受診中,妊娠20週頃より左鼠径部に立位で増大する直径4cm大の軟らかい膨隆を自覚するようになり,さらに軽い痛みを訴えるようになったため妊娠25週4日に当科紹介となった.外科にコンサルトしたところ鼠径ヘルニアの診断を受けたが症状が増悪しなければ妊娠中は原則的に経過観察とし,今回帝王切開時に同時に根治手術を施行するという方針となった.妊娠37週4日腹式深部帝王切開術を施行し,女児2906gを娩出した.腹腔内所見は異常なく妊娠子宮が骨盤内を占拠して子宮前面には左右ともに腸管の陥入は認められなかった.閉腹後,外科医師による鼠径ヘルニア手術を開始したが鼠径管内にヘルニア嚢や腸管の陥入の所見はなく,数珠状に連なる円靭帯静脈瘤が認められるのみであり,鼠径部膨隆の原因は円靭帯静脈瘤によるものと確定した.そこで円靭帯結紮および鼠径管後壁補強術を施行し手術を終了した.術後は鼠径部膨隆や疼痛の消失し,順調に経過した.妊娠中の静脈瘤は下肢,外陰などに多く認められるが,円靭帯静脈瘤の報告例は稀であり調べた限りでは海外8例,国内2例の報告があるにすぎない.文献的に円靭帯静脈瘤と鼠径ヘルニアの鑑別には超音波が有効であるとされているが,本症例は妊娠中には施行しなかった.本症例における反省を含め,両疾患の鑑別や対応法について文献的考察を加えて比較・検討し報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
186-186, 2004
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