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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))

【一般演題】
妊娠・分娩3
胎盤内絨毛癌に合併した胎児母体間輸血症候群の1例


高橋 宏典1), 吉田 昌史1), 川上 裕一1), 斎藤 恵子1), 酒井 優2), 水本 賀文1)
自衛隊中央病院産婦人科1), 自衛隊中央病院病理2)


 【緒言】胎児母体間輸血症候群(fetomaternal hemorrhage:FMH)は胎児血が胎盤を介して母体血中に混入し,胎児が貧血を呈する病態である.この原因として,羊水穿刺,外回転,胎盤腫瘍,常位胎盤早期剥離などが考えられている.今回,胎盤内絨毛癌を合併したFMHを経験したので報告する.【症例】30歳,未経妊.既往疾患なし.妊娠39週1日,妊婦健診時,胎動の減少および胎児発育遅延が認められた.NSTにて基線細変動の低下と変動一過性徐脈がみられたため管理入院となった.39週3日,基線細変動の低下および遅発一過性徐脈のため,緊急帝王切開にて2,272gの女児を娩出した.新生児は全身蒼白であり,Hb 5.1g/dlと著明な貧血が認められた.母体血検査ではHbF 1.4%,AFP 4,740ng/mlと高値であり,新生児に溶血やその他,原因となる所見はみられなかったため,FMHと診断した.原因検索のために胎盤の病理検査を施行したところ,白色で境界明瞭な2cm大の絨毛癌を胎盤内に認めた.母体および新生児に血液検査等を実施したが絨毛癌の転移所見は認められなかった.予防的化学療法は行わず,現在外来経過観察中である.【結語】胎児が150ml以上失血する著明なFMHの頻度は0.1%以下といわれており,加えて胎盤内絨毛癌合併症例は極めて稀である.胎盤内絨毛癌は肉眼的に確認できるものは梗塞巣と酷似し,さらに肉眼的に確認されない状態で存在することも多いと考えられる.FMHを呈した症例は胎盤内絨毛癌を念頭におき,詳細な胎盤を含めた病理組織検査を実施して経過観察することが重要であると思われた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2) 189-189, 2004


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