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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩4 内腸骨動脈および子宮動脈結紮術後に妊娠した一症例
三雲 美穂, 安達 知子, 大原 麻美, 奥平 忠寛, 新井 理水, 倉田 章子, 太田 博明
東京女子医科大学産婦人科
止血困難な大量子宮出血に対し,内腸骨および子宮動脈の結紮術を行い,その後妊娠した症例を経験したので報告する.症例は34歳.CIS,子宮内膜症,子宮腺筋症の診断にて,29歳時子宮頚部円錐切除術および後腟円蓋部内膜症部分切除術を行い,6ヵ月間GnRHa療法を施行した.31歳時クロミフェン投与にて妊娠したが,稽留流産となり子宮内容除去術(D&C)を施行.その4日後,絨毛遺残の疑いで再度D&Cを施行.その1ヵ月半後から不正出血が続き,突然大量出血を認め緊急入院となった.入院時Hb6.9g/dl,安静,輸液等で出血は一時的に軽快したが,入院10日目に再び大出血から出血性ショックとなり,大量輸血下に開腹手術を行った.開腹時子宮は柔らかく腫大し,骨盤内に内膜症所見を認めたが他に異常所見はなく,子宮の双手圧迫,PGF2αの局注下で再度D&Cを行った.しかし,止血傾向は認めなかったため,左内腸骨動脈及び右子宮動脈結紮術を施行し,速やかに止血した.術後経過は良好で,10日目に施行したMRアンギオでは子宮への血流も復していた.その後GnRHa療法を経て,術後1年半でクロミフェン投与にて妊娠した.現在妊娠19週にて経過は順調で,児の発育は週数相当である.本症例の出血の原因としては,絨毛遺残にともなう感染と子宮腺筋症が最も考えられたが,出血・高度貧血に伴う悪循環から大量出血となり出血性ショックに至った.近年子宮動脈塞栓術後の妊娠例も散見されるが,動脈結紮術後の妊娠例の報告はほとんどない.本症例はすぐに子宮血流の再開は確認されているが,今後の胎内発育遅延や早産徴候などの出現の有無に注意を払いたい.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
191-191, 2004
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