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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩4 ミトコンドリア病が疑われた妊娠の一症例
新田 律子, 村山 敬彦, 斉藤 正博, 馬場 一憲, 竹田 省
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター
近年,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の突然変異がミトコンドリア脳筋症という特殊な疾患を引き起こすだけでなく,内分泌異常や心疾患の原因として注目を集めている.今回ミトコンドリア病が疑われる症例を経験したので報告する.【症例】23歳,初産.家族歴;祖母がミトコンドリア病(発症は老年期).母親もミトコンドリア脳筋症.現病歴;初期より,他院で妊婦健診を受けていた.妊娠26週5日より尿糖(2+)が認められ,妊娠28週5日より尿糖(4+)が認められる様になった.妊娠30週4日,BS 185mg/dl,HbA1c 7.0%のため,妊娠31週1日に当科紹介となった.採血にてBS 260mg/dl,HbA1c 7.3%と高値であり,また超音波上頚管長の短縮を認め,GDM,切迫早産のため翌日入院管理となった.一日血糖は300mg/dl前後,インスリン8μU/mlと低値,乳酸62mg/dlと高値,尿中ケトン(±〜−)動脈血ガスでは,呼吸性アルカローシスを認めた.眼底検査には異常は認められなかった.ただちにインスリン治療を開始したが,一日3回投与ではコントロールが難しく,持続投与も併用し妊娠34週頃には血糖値が安定してきた.また,切迫早産に対しては,塩酸リトドリンを経静脈的投与していた.妊娠36週2日,骨盤位,子宮内胎児発育遅延のため帝王切開術を施行した.児は女児,2186g,Apgar Score 8/9であった.術後は血糖も落ち着き,術後7日目に退院となり,現在も血糖はやや高値であるが,食事療法にて管理されている.【結語】血糖のコントロールに苦慮した一症例であった.本邦での糖尿病患者の1%はミトコンドリア病が原因であるといわれている.遺伝相談を含めた妊娠分娩管理が必要と思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
194-194, 2004
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