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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))

【一般演題】
妊娠・分娩5
診断および病因・病態の解明に脳MRIが有用であった子癇,子癇前症5例の検討


田島 敏樹1), 甲賀 かをり1), 岩澤 有希1), 松村 英祥1), 越野 哲郎1), 内田 律子1), 坂巻 健1), 井上 丈彦1), 吉村 理1), 長阪 恒樹1), 常深 泰司2)
武蔵野赤十字病院産婦人科1), 武蔵野赤十字病院神経内科2)


 【緒言】近年,子癇患者の脳MRI所見の異常が,本疾患の診断および病態解明において注目されている.今回我々は,分娩前後に痙攣発作・激しい頭痛をきたし,MRI T1T2強調像に加え,MRA,fluid-attenuated inversion recovery(FLAIR)画像,拡散強調画像,apparent diffusion coefficient(ADC)mapにて経過を追跡しえた子癇4例,子癇前症1例について報告する.【症例】全症例にT2強調像およびFLAIR画像で高信号を示す領域を認めた.FLAIR画像の方が描出能が鋭敏であった.領域は後頭葉白質を中心としたいわゆるposterior leukoencephalopathyは2例で,基底核と頭頂葉が1例,被殻が1例,橋・中脳周囲が1例でありこの症例では脳幹障害を示唆する症状が強かった.拡散強直画像とADC mapでは,これらの領域のADC値は上昇しており,可逆性病変である血管性浮腫を反映していると考えられた.4例でクモ膜下出血が示唆されたが,MRAで出血の原因となる血管の異常は否定された.全5例とも保存的治療によりfollow upMRIで異常所見は消失し,急性期の所見が可逆的であったことを裏付けた.【結語】脳MRIは子癇の診断・他疾患の除外診断だけでなく,多様性に富む子癇の症状を理解する上でも有用であった.子癇の病因は,高血圧により血管透過性が上昇し可逆性の血管性浮腫が生じるためとされているが,血管攣縮による低灌流状態から不可逆性の細胞傷害性浮腫を起こすことがあることも知られている.今回の検討より,急性期のMRIに,拡散強調画像,ADC mapを併用することで,さらにこれらの鑑別が可能となり,個々の症例の質的評価ならびに予後の判定にも有用である可能性が示唆された.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2) 196-196, 2004


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