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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩5 妊娠中の血漿交換によるP式血液型不適合妊娠の管理
細川 有美, 金井 孝夫, 山下 隆博, 安水 渚, 菊池 昭彦, 亀井 良政, 藤井 知行, 久具 宏司, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
P式血液型不適合妊娠は極めて稀な合併症妊娠であるが,妊娠初期の流産を繰り返し無治療では生児を得ることがまず不可能である.その原因は抗P抗体による胎児・胎盤組織への妊娠初期の傷害と考えられている.従って妊娠初期から血漿交換を行い,十分に抗体価を低下させることが必要である.今回P式血液型不適合妊娠による反復流産症例に対し,妊娠初期より血漿交換療法を58回施行し生児を得た症例を経験したので報告する.症例は36歳女性,2回経妊0回経産,16週での子宮内胎児死亡を2回経験し,不規則抗体陽性にて当科に紹介された.P式血液型がp型で抗Tja抗体(=抗P1+Pk+P抗体)が陽性であった.抗Tja抗体が流産の原因と考えられたため,次回の妊娠では妊娠初期から血漿交換を行う方針とした.今回,妊娠成立確認後,7週より週3回の血漿交換療法(二重膜濾過法)を開始した.不規則抗体価は治療前は間接Coombs法にて256倍と高値を示していたが治療により順調に低下し,10回目頃より8〜16倍と安定した.妊娠16週から週2回,妊娠26週から週1回と血漿交換の回数を減らしたが,子宮内胎児発育遅延などを認めず,胎児well-beingは良好であった.分娩方針については妊娠37週での選択的帝王切開術を行うこととしたが,希少な血液型であるため早期(26週)から自己血貯血を開始し計1200mlを準備した.児の経過も順調でこれまでの報告同様新生児に強い黄疸を認めることもなかった.ただし血漿交換に伴う妊娠中の出血,血栓傾向,及びカテーテルトラブルが発生し,血漿交換療法の注意点と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
201-201, 2004
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