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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))

【一般演題】
胎児・新生児2
胎児多発性嚢胞腎の1症例


小川 浩平, 永井 宣久, 久野 宗一郎, 宮川 康司, 正岡 直樹, 山本 樹生
日本大学産婦人科


 症例は38歳3回経妊2回経産.近医で妊健施行していた.妊娠30週頃より両側腎の進行性の腫大を認め,妊娠34週,精査・管理目的に当院紹介,入院となる.入院時超音波検査にて両側腎の肥大(右:48×60mm,左:67×58mm)を認め,横隔膜の挙上,心臓位置の上昇を認めた.超音波検査およびMRI検査にて明らかな胎児の外表奇形は認められなかった.心脈管系は形態的異常は認められなかったが,下大静脈が肥大した腎により腹側前方変位を呈し,PLIは0.53と心負荷所見を認めた.臍帯動脈のPIは1.14,中大脳動脈のPIは1.48であった.入院後,家族歴の聴取及び超音波検査を施行.母体,母体の祖母,第一子,第二子に多発性嚢胞腎が認められた.診断は妊娠34週胎児両側多発性嚢胞腎(常染色体優性遺伝型の胎児発症型).入院後肺発達及び尿産生の評価をおこなった.肺に関しては,過去の超音波から妊娠28週頃までは羊水が正常に存在していたことにより,ある程度の発達が予想されたが,肺肝MRI信号強度比より組織の圧迫によるDry Lungが予想された.腎機能では,羊水量は59mmと少なく,膀胱は小さく経過中充満像を呈す事が無く,尿産生の低下が示唆された.腫大腎により腹囲の著明な増大を認め,経腟分娩は不可能と判断.帝王切開にて37週3日,出生体重3200g,Apgar2点で男児を娩出.手術室で挿管しNICUへ収容した.入院時呼吸状態悪く筋弛緩剤を使用し調節呼吸となる.その後は酸素飽和度徐々に上昇したが腎機能は徐々に低下しアルブミン,利尿剤の投与も行ったが全身の浮腫は著明となる.嚢胞腎,腎不全に対して生命維持の為には透析と腎摘出術が必要と考えたが,積極的な治療は行わず.日齢18日に腎不全にて死亡した.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2) 211-211, 2004


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