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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
卵巣悪性腫瘍2 腹壁転移を伴う卵巣上皮性境界悪性腫瘍の一例
秦 奈峰子, 時田 佐智子, 馬場 征一, 島 絵美里, 幡 亮人, 幡 優子, 古堅 善亮, 三橋 直樹
順天堂大学伊豆長岡病院産婦人科
卵巣上皮性境界悪性腫瘍の進行は緩徐であり,初期に診断されることが多い.70―85%がI期,30%がII期あるいはIII期で診断され,IV期は非常に稀である.治療は,手術による完全摘出が必要で化学療法は無効とする報告が多い.今回我々は,腹壁に転移性病変を認めたIV期の卵巣上皮性境界悪性腫瘍を経験したので報告する.症例は65才,2経妊,1経産(帝王切開分娩).35才時に癒着剥離術,虫垂切除術.2ヶ月ほど前より全身倦怠感と腹部腫瘤感を自覚し近医を受診した.骨盤内腫瘤と腹壁瘢痕ヘルニアを疑われ当科紹介受診した.骨盤腔より臍上部にまで至る巨大腫瘤を認めた.超音波検査,CT検査で左付属器由来と考えられる充実性部分を伴う嚢胞性腫瘤を認め,臍部付近には皮下浸潤像を認めた.その他上部下部消化管などに異常を認めなかった.腫瘍マーカーのCA125は450,CA19-9は69600,CEAは160といずれも高値だった.以上より,卵巣癌を疑い開腹術を施行した.左卵巣由来の骨盤内腫瘤を認め,同部の術中迅速病理組織検査で粘液性嚢胞性腫瘍(境界悪性)と診断した.臍部付近の腹壁に転移巣と考えられる病変を認めた.腹式単純子宮全摘術,両側付属器切除術,大網部分切除術,骨盤内リンパ節生検,腹壁転移巣切除術を行った.術後病理組織検査で粘液性嚢胞性腫瘍,境界悪性と診断した.切除した腹壁に転移性病変を認めた.術後の方針について,本人および家族と相談し,現在無治療で経過観察中である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
254-254, 2004
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