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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
妊娠分娩1 妊娠初期に総腸骨静脈血栓症を発症し,分娩前に一時的下大静脈フィルターを挿入し経膣分娩に成功した一症例
浜田 佳伸, 堀中 奈奈, 安藤 昌守, 杉山 紀子, 友部 勝実, 矢追 正幸, 堀中 俊孝, 榎本 英夫, 林 雅敏, 大藏 健義
獨協医科大学越谷病院産婦人科
【目的】近年,本邦においても妊娠中や産褥期の深部静脈血栓症の発症率の増加が問題となっている.今回,我々は妊娠初期に総腸骨静脈血栓症を発症したが抗凝固療法を施行し,分娩前に一時的下大静脈フィルターを挿入して分娩管理した症例を経験したので報告する.【症例】32歳.0経妊0経産.既往歴,家族歴に特記すべきことを認めず.近医にて妊娠管理されていたが妊娠12週時に左下肢痛,左下肢浮腫を訴えて近隣外科病院を紹介受診した.MR angiographyにて左総腸骨静脈血栓症を指摘され,当科にて転院となった.color doppler echoにて左総腸骨静脈の血流途絶を認め,PT12.3sec(対照13.0sec),APTT38.1sec(対照36.2sec),FDP15.0,d-dimer15.72,Protein S 106,Protein C 110,TAT 19.0,PIC 1.3,α2-PI 129であった.動脈血液ガス所見はpH7.440,PaO262.9mmHg,PaCO233.8mmHgであった.左総腸骨静脈血栓症及び微小肺血栓疑にてヘパリンの持続投与を10000単位/日より開始し25000単位/日まで増量した.肺血流シンチの施行や永久的下大静脈フィルターの挿入も考慮したが,症状及び血液ガス所見の改善を認めたためヘパリンの投与のみを続行した.妊娠17週時よりヘパリンを漸減しアスピリン81mg/日の経口投与に切り替えて外来管理とした.妊娠36週で管理入院としヘパリン投与を再開した.妊娠39週0日時インフォームドコンセントを得て分娩時および産褥期の肺血栓予防のため一時的静脈フィルターを下大静脈に挿入した.妊娠39週4日時に陣痛発来し,2956gの男児を経膣分娩した.下肢症状の悪化や肺血栓の発症は認めず,分娩後4日にて静脈フィルターを抜去した.以降も下肢症状の悪化や肺血栓の発症は認めていない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
260-260, 2004
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