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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
妊娠分娩1 妊娠初期に発症した深部静脈血栓症合併妊娠に対しダナパロイドナトリウムを使用した1例
尾本 暁子, 加来 建志, 坂本 理恵, 増田 健太郎, 長田 久夫, 関谷 宗英
千葉大学附属病院周産期母性科
妊娠・分娩は血栓を作りやすい状態にあり,非妊時に比較して約5倍の発症率といわれている.血栓症はこれまで日本では比較的稀とされていたが,生活様式の欧米化に伴い,近年血栓症合併妊娠の増加も臨床上大きな問題となっている.肺血栓塞栓症の90%以上は深部静脈血栓症に起因するとされ,その予防および治療は極めて重要である.日本では血栓症に対し未分画ヘパリンによる抗凝固療法が行われている.一方未分画ヘパリンは頻繁な凝固検査の必要があることや出血傾向や骨粗鬆症,血小板減少などの副作用があることから欧米では低分子ヘパリンの投与が一般的である.低分子ヘパリンの一つであるダナパロイドナトリウムは,他の低分子ヘパリンに比較して半減期が長く血小板減少等の副作用が少ない特徴をもつ.今回我々は,妊娠初期に発症した左下肢の深部静脈血栓症に対して,ダナパロイドナトリウムにて妊娠経過を外来フォローした1例を経験したので報告する. [症例]24才,1経妊0経産,身長155cm,非妊時体重40kg.妊娠13週時左下肢疼痛,浮腫,歩行困難が出現し,前医整形外科に入院した.左下肢深部静脈血栓症による血栓性静脈炎の診断にて未分画ヘパリン及び抗生物質にて治療開始,妊娠15週時妊娠分娩管理目的にて当院転院となった.当院入院中は未分画ヘパリンにて治療を継続した.下肢の症状の軽快および肺血栓塞栓症を疑う所見がないことから妊娠19週よりダナパロイドナトリウム2500単位皮下注を1回/日に変更し,外来フォローとした.現在妊娠34週左下肢血栓は軽快傾向にあり,妊娠経過順調である.分娩・産褥経過も含め,報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
261-261, 2004
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