|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
妊娠分娩2 妊娠初期に発症した劇症1型糖尿病の一例
大淵 紫, 齊藤 俊雄, 佐川 泰一, 林 敏, 鈴木康伸, 清川 尚
船橋市立医療センター産婦人科
劇症1型糖尿病はインスリン分泌能が急激に低下し糖尿病性ケトアシドーシス(Diabetic ketoacidosis:以下DKA)で発症する1型糖尿病の亜型であり,女性では妊娠中に発症する例が少なくない.妊娠に伴って発症する1型糖尿病のほとんどが劇症1型糖尿病であり妊娠中発症例では胎児予後が極めて不良とされている.今回我々は妊娠5週で発症した劇症1型糖尿病の一例を経験したので報告する. 症例は27歳,0経妊0経産.平成15年11月1日を最終月経として妊娠成立.同年12月5日より発熱,食欲低下,心窩部痛が出現し,12月9日(妊娠5週4日)自然流産.翌日より悪心・嘔吐,口渇,呼吸困難が出現し12月11日当院を受診した.受診後より意識障害(Glasgow Coma ScaleにてE3V4M6)が出現.血糖978mg/dl,動脈血にてpH 6.986,PaCO2 9.2mmHg,HCO3-2.1mmol/l,sBE−27.7mmol/lであり,DKAと診断しICUにて全身管理とした.脱水補正の為の大量輸液とインスリン持続注入を開始し,全身状態は徐々に改善.15日にICUを退室し,27日に退院.現在はインスリン皮下注射にて血糖コントロールは良好である. 本症例では入院時,著明な高血糖を認めたが,HbA1cは5.5%と正常範囲.尿中Cペプチド1.5μg/day未満,血中Cペプチド0.05ng/ml未満.抗GAD抗体は陰性.血中アミラーゼ185 IU/l,エラスターゼ1900ng/dlと高値であることなどから,妊娠初期に発症した劇症1型糖尿病と考えられ,若干の文献的考察を加え報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
265-265, 2004
|