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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
妊娠分娩7/産褥1 産褥期に意識障害を繰り返したオルニチン・トランスカルバミラーゼ欠損症の一例
松本 順子, 山口 俊一, 岡村 麻子, 岡田 智志, 瀧澤 聡子, 山田 学
日立総合病院産婦人科
オルニチン・トランスカルバミラーゼ欠損症(OTC欠損症)は高アンモニア血症により嘔吐,意識障害などを起こす先天性尿素サイクル異常で,約8万人中一人に発症する.OTC遺伝子はX染色体上にあるため,男性の場合は酵素活性が低いので幼児期までに発症するが,女性の場合は気づかれずに成長することも多い.我々は,第一子の分娩後に生じた意識障害により初めてOTC欠損症と診断され,第二子の分娩後にも意識障害を繰り返した症例を報告する.症例は初発時21歳.既往歴なし.家族歴では父親に肝障害あり.幼少時から肉・魚を食せず,豆類が好物であった.妊娠26週に里帰り分娩にて初診.妊娠経過は異常なく,妊娠38週に3170gの男児を経膣分娩した.産褥4日目に母児ともに退院.産褥6日目見当識障害にて受診.高アンモニア血症(血中アンモニア256mg/dl)の診断で緊急入院した.血液ろ過療法にて高アンモニア血症・意識レベルの改善を認め,入院後11日で退院した.このとき尿中有機酸分析と肝生検にてOTC欠損症と診断された.2年後妊娠にて受診.妊娠経過中問題なく,妊娠39週経膣分娩にて女児2860gを得た.産褥4日目退院.低蛋白食を継続していたが,産褥6日目口渇感,頻尿,注視障害を主訴に受診.血中アンモニア393mg/dlのため緊急入院した.輸液にて改善し,入院後11日で退院した.1度目の高アンモニア血症は家族から勧められて高蛋白食を摂取していたため発症したと考えていた.しかし2度目の産褥期は低蛋白食を徹底したにもかかわらず,再発をきたした.産褥期における蛋白質の異化亢進が高アンモニア血症の原因と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
279-279, 2004
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