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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
産褥2 正常分娩後発症し保存的治療にて軽快した卵巣静脈血栓症の1例
深澤 由佳, 鈴木 靖子, 石山 朋美, 沼崎 令子, 近藤 芳仁, 飛鳥井 邦雄
横浜南共済病院産婦人科
産婦人科手術に伴って発症する静脈血栓症は増加傾向を示し,特に肺塞栓症は最も重篤な合併症で致命的となるため,十分な注意が払われている.一方分娩後に発症する静脈血栓症として,1956年Austinらによって産褥早期卵巣静脈に血栓を形成する産褥期卵巣静脈血栓症が報告されている.この産褥期卵巣静脈血栓症は欧米に比し本邦では希と考えられてきた.しかし,生活様式の変化に伴い,今後増加する可能性が危惧される.今回我々は正常分娩後に発症し,保存的治療にて軽快した症例を経験したので,その特徴・成因等若干の文献的考察を加え報告する. 症例は42歳,4回経妊3回経産.家族歴・既往歴には特記すべきことはない.正常分娩後4日目より発熱を認めたが,悪露の細菌培養は陰性であり,子宮内膜炎を示唆する所見はなかった.一方でCRPが20台と強陽性を示したため抗生剤投与は続行した.その後も発熱は遷延し,分娩後18日目に新たに右下腹部痛を自覚,右下腹部腫瘤を触知,さらに経腹超音波断層像にて右水腎症も認めるようになったためCTを施行した.CT上,右卵巣静脈領域に長径約10cmにわたる腫瘤像が認められたこと,またカラードプラー法により右卵巣静脈血栓症と診断した.直ちにヘパリン・ワーファリンによる抗凝固療法を施行し,発熱・症状ともに軽快した.約二ヶ月間の抗凝固療法により血栓はCT上認められなくなった. 欧米では現在まで約700例の報告例があり,主として保存的治療が行われている.本邦でも卵巣静脈血栓症は5例報告されているが,保存治療にて軽快した例は,我々が検索しうる限り報告例がない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
280-280, 2004
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