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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
産褥2 弛緩出血・頸管裂傷で止血し得ず子宮全摘出後,コンパートメント症候群及び消化管出血をきたした症例
村山 さつき, 袖本 武男, 根本 明彦, 星野 寛美, 斉藤 一夫, 関 博之
関東労災病院産婦人科
コンパートメント症候群とは外傷,長時間の圧迫等により筋区画内が高度な腫脹を来たし,循環障害から組織が壊死に陥るものである.さらに筋肉壊死から急性腎不全を来たすことが知られている.今回分娩後大出血を生じ,その後コンパートメント症候群および消化管出血を来たした症例を経験したので報告する.症例は34歳1G1P,妊娠38週5日陣発入院,翌日妊娠38週6日3485gの男児をApgar Score(1’)7点で正常経腟分娩したが,子宮頚管裂傷および弛緩出血の為,推定出血量1500ccの時点で手術室へ移動,砕石位で頚管裂傷縫合及び双合圧迫するも止血できず子宮全摘出術を施行した.分娩後から手術終了まで8時間57分,推定出血量16958mlであった.術後覚醒後より下腿疼痛の訴えを認めCK値41780と著明に上昇,両下腿緊満し両側下腿内圧共に80〜100mmHgと上昇を認めた.以上よりコンパートメント症候群と診断し両下腿筋膜切開術を施行した.術後尿量減少,BUNおよびCre増加し横紋筋融解症に伴う急性腎不全の為,血液透析および血液濾過,血漿交換を16日間にわたり施行した.一方,透析初日より持続した下痢症状の為,下部消化管内視鏡検査を施行,S状結腸までに全周性の虚血性変化を疑う潰瘍病変を認め,絶食で経過観察の方針となる.術後52日400ccを越える下血を認め,他院救急医療センターに搬送,腸管切除および人工肛門造設術を施行され現在退院,外来フォロー中となっている.産婦人科領域でのコンパートメント症候群の報告は非常に稀であるが,出血多量および手術中の体位(砕石位)が今回の発症に関連があると考えられる.転院後の経過を含め,文献的考察を加えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
281-281, 2004
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