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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
胎児新生児1 出生前に茎捻転をおこした胎児卵巣嚢腫の2例
中村 裕美, 清水 久美子, 伊澤 美彦, 金子 透子, 松田 善文, 田巻 勇次
松戸市立病院産婦人科
胎児卵巣嚢腫は,約2600分娩に1例の稀な疾患である.ほとんどは片側性の貯留嚢胞であり,出生後に消失する.しかし,妊娠経過中に茎捻転や破裂をおこすことがあり,その管理は重要である.今回我々は,出生前に茎捻転をおこした胎児卵巣嚢腫の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.【症例1】40歳,初産.前置胎盤にて妊娠29週2日当科紹介初診.外来にて経過観察していたが,妊娠35週1日,羊水過多と胎児腹腔内嚢胞を認め,消化管閉鎖が疑われた.妊娠37週3日,帝王切開を施行.児は2356g,女児,Aps8/9.腹部超音波にて右下腹部に直径5cm大の嚢胞を認め,右卵巣嚢腫が疑われた.出生直後の採血では,Hb11.9g/dl,Ht36.3%であったが,翌日の採血にて,Hb9.0g/dl,Ht27%と貧血が進行し,経皮的な穿刺にて血性内容液35mlが吸引されたため,卵巣嚢腫茎捻転による出血が疑われ,開腹にて右付属器切除術が行われた.児は日齢16日目に経過良好にて退院となった.【症例2】32歳,2経産.他院にて妊娠32週より胎児卵巣嚢腫を指摘され,妊娠35週5日当科紹介初診.初診時,腹腔内に44×32mmの嚢胞を認めた.妊娠38週1日,前2回帝王切開の既往にて帝王切開を施行した.児は2860g,女児,Aps9/9.日齢1日目にCT,MRIを施行し,35×36mmの右卵巣嚢腫を認めたが,出血の有無ははっきりせず,日齢2日目に試験穿刺を施行した.赤褐色の内容液が3ml吸引されたが血球成分はほとんどなく溶血しており,過去の茎捻転と考えられたため,手術は行わず経過観察となった.内容液は,エストラジオール3570pg/ml,プロゲステロン70ng/mlと高値であった.その後児は著変なく,日齢11日目に退院となった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
283-283, 2004
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