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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
胎児新生児2 出生前診断し得た尾部退行症候群の1例
嘉治 真彦, 手塚 彩子, 澁谷 裕美, 伊藤 路奈, 望月 朋子, 渡邉 由紀子, 酒井 謙, 勝又 木綿子, 酒井 啓治, 高橋 康一, 岩下 光利
杏林大学産婦人科
出生前に尾部退行症候群と診断し,生児を得た症例を経験したので報告する.症例は27才女性,1経妊1経産.妊娠24週で当科初診した.糖尿病と診断され治療を受けていたがHbA1cは5.3%と食事療法のみで管理は良好であった.妊娠33週,胎児超音波検査において仙骨および大腿骨の形成不全を認め尾部退行症候群を疑った.当日の血糖値は288mg/dlと高値のため,胎児精査および糖尿病管理目的にて入院管理とした.妊娠35週,胎児MRI検査で下肢の形成不全を認めたが鎖肛・内臓奇形を認めず,食事療法およびインシュリン使用により血糖管理良好となり,胎児Well-beingが良好であったため経腟分娩可能と判断し自然陣痛発来待機とした.妊娠40週3日にて陣痛発来,経腟分娩に至った.出生体重2897g身長43cm,Apger score 1分値8点,5分値9点であった.児は仙骨,骨盤および下肢の形成不全を認めたが,排便・排尿も可能であり呼吸状態良好で,致死的要因となるような異常は特に認めなかった.出生後,児は当院小児科に入院し精査・加療中である.尾部退行症候群は胎生期初期の尾部脊椎の形成不全により発生する多種の器官に様々な程度の異常をきたす症候群であり,新生児期の手術治療を要したり,致死的異常を合併することもある.今回,MRI検査により出生前に児の状態を把握でき,外科手術が必要となる消化器・泌尿器合併症のないことを確認できた.胎児尾部退行症候群において胎児MRI検査が診断のみならず出生後の予後の検討に有用であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
287-287, 2004
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