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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
卵巣良性腫瘍 子宮捻転壊死を来した巨大卵巣腫瘍の一例
中川 圭介, 江成 太志, 川村 久恵, 山藤 晶子, 上里 忠和, 大岡 史子, 五十嵐 敏雄, 梁 善光
帝京大学附属市原病院産婦人科
子宮捻転は非常に稀な疾患であり,妊娠子宮や巨大子宮筋腫において子宮頸部を軸として子宮体部が捻転したという報告例はあるが,卵巣嚢腫にともなう子宮捻転の報告例はない.今回我々は巨大な卵巣嚢腫(傍卵巣嚢腫)の茎捻転により子宮も捻転,壊死を来した稀な症例を経験したので報告する.症例は76歳,3経妊2経産婦.2004年2月1日右下腹部痛を主訴に当院外科受診.腹部膨隆を認めたが,超音波断層検査およびCT検査にて骨盤から肝直下まで達する巨大腫瘤を認めたため翌2日当科紹介となり,巨大卵巣嚢腫茎捻転を疑い同日緊急手術となった.腹腔内に癒着はなく,腹水を少量認めた.肝直下まで達する巨大な右卵巣嚢腫が時計回りに540度捻転,暗赤色に変色していた.左卵巣も径5〜6cmに腫大していた.また,子宮は右卵巣嚢腫の捻転に巻き込まれほぼ全体が暗赤色に変性・壊死していた.このため両側付属器切除術施行後,単純子宮全摘術も追加施行した.右卵巣は約6.5kgと非常に巨大であることに加えて,子宮および周囲組織が加齢によって小さくかつ脆弱化していることにより子宮も巻き込まれ捻転・壊死したものと考えられた.手術時間;3時間45分,出血量;約600ml.病理診断;捻転により壊死した右傍卵巣嚢腫と子宮,および左卵巣漿液性嚢腫,悪性所見はなし.術前腫瘍マーカーは陰性であった.術後経過良好であり,2月13日(術後11日目)退院となった.本症例における子宮捻転の軸は右卵管角方向に傾いていた.われわれの調べうる範囲内で本症例のような卵巣嚢腫に伴った子宮捻転の報告は過去になく,一例報告ではあるが本症例における原因や特徴を考察し報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
296-296, 2004
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