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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
卵巣良性腫瘍 Meigs症候群を呈した卵巣甲状腺腫の一例
錦見 恭子1), 岡嶋 祐子1), 大川 玲子1), 会田 春光3), 中野 雅行2)
国立千葉病院産婦人科1), 国立千葉病院病理2), 国立千葉病院研究検査科3)
卵巣甲状腺腫は全卵巣腫瘍の0.2〜0.5%をしめる稀な疾患である.今回,多量の胸腹水貯留を認め,Meigs症候群を呈した卵巣甲状腺腫の一例を経験したので報告する.症例は66歳,下腹部痛,腹部膨満感があり,近医内科にて胸腹水を指摘され当科紹介となった.経腟超音波検査にて左卵巣に一部充実性部分のある10cm大の多房性嚢胞をみとめた.また経腹超音波にて腹水・右胸水を認めた.CA125は1394U/mlと高値を示した.ダグラス窩穿刺にて淡黄色の腹水を採取,細胞診は陰性であった.悪性卵巣腫瘍の疑いにて手術となった.開腹所見:左卵巣は新生児頭大の多房性嚢胞を認めS状結腸に軽度癒着していた.右卵巣卵管・子宮は正常.腹水は3500mlであった.手術診断上卵巣癌疑いにて単純子宮全摘術と両側付属器切除術を施行した.病理所見:卵巣は嚢胞状の腫瘤で内面は平滑,茶褐色のゼリー状物質を含んでおり,エオジンに濃く染まっていた.一部壁の肥厚を認め,小型立方形細胞が様々な大きさの腺構造を形成し充実性に増殖していた.その一部には小空胞を認め腔内にコロイド様物質がみられ甲状腺濾胞の構造に類似していた.免疫染色にてthyroglobulin陽性,thyroid transcriptional factor-1陽性chromogranin A陰性であった.以上の所見より卵巣甲状腺腫と診断した.術後経過:術翌日から胸水は著名に減少した.経過順調にて退院となった.充実性部分のある卵巣腫瘍に胸腹水を伴っている場合,悪性の可能性も高く術前診断に苦慮することが多い.今回卵巣甲状腺腫によるMeigs症候群という稀な症例を経験したので診断の一助として報告した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
296-296, 2004
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