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第108回学術集会(平成16年10月10日(日))
【一般演題】
子宮内膜症 巨大子宮内膜症性嚢胞の1例
吉田 有里, 黒瀬 圭輔, 西 弥生, 土居 大祐, 米山 剛一, 明楽 重夫, 竹下 俊行
日本医科大学産婦人科
子宮内膜症性嚢胞は,子宮内膜症によって卵巣内に血液成分が貯留する疾患であり,一般的に月経痛,下腹部痛などをともなうことが多い.今回我々は,長期にわたり自覚症状なく経過した巨大子宮内膜症性嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は39歳,未経妊.約10年前より卵巣腫瘍を指摘されるも放置していたが,下腹部痛,下腹部腫瘤感,発熱,食欲不振感が出現し,さらに約7kgの体重減少を認めたため当科受診となった.診察及び画像所見上,腹腔内を充満する腫瘍は最大径約30cmにおよび,単房性で内容は均一であったが一部充実性部分を含んでいた.また腫瘍マーカーはCA19-9:142.3U/ml,CA125:218.0U/mlと上昇していた.以上より,卵巣癌または子宮内膜症性嚢胞疑いにて開腹手術となった.術中所見は,腫瘍は胸骨下縁にまでおよび,表面平滑,軟,また腫瘍と腸管および腹壁との間に膜状の癒着を認めた.子宮は正常大であり,少量の淡血性腹水を認めた.腫瘍内容液は古い血液成分であり,吸引した内容液は約6,500mlにおよんだ.両側卵巣の腫大を認めたため,両側卵巣原発の卵巣腫瘍と考え,左付属器切除術および右卵巣腫瘍摘出術を施行した.摘出した卵巣腫瘍を迅速病理組織診断に提出したところ,結果は子宮内膜症性嚢胞であった.本症例は巨大な腹部腫瘤の患者が受診した場合,まれではあるが,子宮内膜症性嚢胞も鑑別診断の一つとして念頭におく必要があるということを示唆した症例であり,若干の文献的考察を加えここに報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(3)
298-298, 2004
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