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第109回学術集会(平成17年6月12日(日))
【シンポジウムI 2.無痛分娩で,分娩第二期になり無感覚のため怒責がかからない.こんな時どうする―無痛分娩の実際と普及のために―】
周産期2 2)産科医の立場から
天野 完
北里大学医学部, 総合周産期母子医療センター
分娩第2期が遷延した場合は新生児罹病率の増加,出血量の増加,発熱頻度の増加などが危惧され,子宮口全開大後,初産で2時間,経産で1時間を経過した場合は何らかの産科処置を考慮する必要があるとされる.しかしながらCTGモニタリングで胎児低酸素症を示唆する所見がみられない限り,第2期時間を根拠に児娩出を急ぐ必要はない.2時間以上経過する場合は産科手術,産道裂傷,絨毛膜羊膜炎の頻度は増加するが,CTG所見がreassuringである限り第2期時間が4時間以上であっても臍帯動脈血pHが7.20あるいは7.00未満の頻度,5分後アプガースコア7点未満の頻度,NICU管理例の頻度が増加することはない. 硬膜外麻酔(EDA)による無痛分娩では運動神経遮断による“努責”の減弱,骨盤底筋群の弛緩による児頭回旋異常の頻度が高いこと,子宮収縮力の減弱などから第2期時間が延長する傾向にあり,米国産婦人科学会では初産3時間,経産2時間を正常限界としている.第2期時間遷延の解決策のひとつは区域麻酔(EDA,PCEA;patient controlled analgesia,脊髄くも膜下硬膜外麻酔併用法;CSEA)で0.25%以下の低濃度局麻薬を選択し運動神経遮断を回避することである.低濃度局麻薬のみでは除痛の質が低下するので麻薬を併用することになり,0.125%あるいは0.0625%ブピバカインとフェンタニル2μg/mlの持続投与(8〜10ml/時間)がスタンダードな方法となりつつある.ほとんどの例が十分に“努責”可能で,積極的に分娩に関与できることから産婦の満足度は高い. “努責”をいつ開始するかに関しては必ずしも見解は一定していない.0.125%ブピバカインを用いたFraserらの検討では早期から“努責”を指示した群の2期時間が123分であったのに対し,“努責”の開始を遅らせた群では187分で,0.0625%ブピバカインを用いたPCEAによるPlunkettの検討では前者が99分,後者が69分である.早期に“努責”を指示しても遅らせても実際の“努責”時間に差はみられない.Fraserらの子宮口全開大後早期より“努責”を指示した群と2時間待って指示した群でのRCTによる検討では“努責”を遅らせた群は中位からの鉗子,吸引分娩の頻度が減少する(RR 0.72,0.55―0.93)ものの臍帯動脈血pHが7.15あるいは7.10未満の頻度は有意に高い(RR 2.45,95%CI 0.55―0.93). Reassuring FHR所見である限り,第2期時間を短縮する必要はなく経過観察でよいが,遷延徐脈(3分以上),一過性徐脈で基線細変動の減少,消失がみられる場合にはクリステレル圧出法を併用し鉗子あるいは吸引により児娩出を図る.子宮収縮が微弱であればオキシトシンの点滴静注により,200モンテビデオ単位以上の子宮収縮を得る必要がある.区域麻酔では回旋異常の頻度は高いが骨盤底筋群の弛緩,除痛により鉗子・吸引術は容易に行いうる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2)
136-137, 2005
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