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第109回学術集会(平成17年6月12日(日))
【シンポジウムII 1.53歳,子宮頸癌IIIb期症例で患者は手術療法を希望している.こんな時どうする―子宮頸癌IIIb期の治療方針について―】
婦人科悪性腫瘍1 1)ネオアジュバント化学療法+手術療法をお奨めします.―進行子宮頸癌に対するPAM-5術前動注化学療法の有効性―
塩沢 丹里
信州大学医学部産科婦人科学教室
近年,進行子宮頸癌に対してネオアジュバント化学療法を行い,腫瘍を縮小させ,手術療法の根治性を高める可能性が期待されている.当科でも1999年よりIb2期以上の子宮頸癌に対しPAM-5(CDDP 70mg/m2,THP 25mg/m2,MMC 15mg/m2,5FU 350mg/m2)による術前動注化学療法(NAC)を導入し治療成績を検討してきた.今回,本治療による治療成績を,特に子宮頸癌IIIb期症例の成績を中心に報告し,加えて当教室における従来の治療方法による成績と比較した. 1999年から2004年のIb2期以上の子宮頸癌42例(Ib+II期32例,III+IV期10例,扁平上皮癌31例,腺癌あるいは腺扁平上皮癌11例)に対しNACを原則的に2回施行後,広汎子宮全摘術を施行した.摘出組織標本上リンパ節転移例と基靱帯陽性例にはPAM-5静注療法を2回追加した.NACの効果はMRIまたはCTによる原発巣およびリンパ節転移巣の縮小率で評価した.またNAC+広汎子宮全摘術の治療成績をその他の治療法と比較検討した. NACを2回施行した42例の反応性は,CR 13例,PR 23例,SD 6例で,原発巣の縮小効果は平均72%と全体に良好であった.Ib+II期症例32例(うち扁平上皮癌22例,腺扁平上皮癌4例,腺癌7例)でのNACの反応性は扁平上皮癌ではCR 10例,PR 11例,SD 1例,腺扁平上皮癌ではPR 4例,腺癌のみではCR 2例,PR 1例,SD 4例であった.原発巣の縮小効果は全平均で56%,扁平上皮癌82%,腺扁平上皮癌64%,腺癌41%で,扁平上皮癌により高いNAC感受性が観察された.この32例中31例に広汎子宮全摘が施行された.この群の治療成績を当病院で以前施行された同じ臨床進行期での手術+術後放射線群or術後化学療法群と比較すると,2群に有意差はないものの,NAC+広汎子宮全摘群がやや成績良好であった.次にIII+IV期の10例(扁平上皮癌9例,腺癌1例)では,NACの反応性はCR 1例,PR 8例,SD 1例(腺癌)であり,原発巣の縮小効果は全平均69%,扁平上皮癌で73%であった.2005年3月時点で8名が再発なく生存しており,この群の治療成績を放射線単独群,および放射線化学療法同時施行群と比較するとNAC+手術群は放射線単独群および放射線化学療法同時施行群と比較して予後良好な傾向がみられた. 以上より,IIIb期を含む子宮頸癌に対するNAC+広汎子宮全摘術は従来の治療法比較して良好な成績が期待できる可能性を示した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2)
138-139, 2005
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