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第109回学術集会(平成17年6月12日(日))

【シンポジウムII 2.29歳,未婚,PCOSで希発月経であった.不正出血が続き,婦人科受診したところ,内膜組織診で子宮体癌(endometrioid adenocartinoma,G1)と判明した.MRI所見からIa期と思われる.こんな時どうする.―妊孕能温存の立場から―】
婦人科悪性腫瘍2
2.29歳,未婚,PCOSで希発月経であった.不正出血が続き,婦人科受診したところ,内膜組織診で子宮体癌(endometrioid adenocartinoma,G1)と判明した.MRI所見からIa期と思われる.こんな時どうする.―妊孕能温存の立場から―


上坊 敏子
北里大学医学部産婦人科


 子宮体癌症例に対する妊孕能温存療法の当科での適応は,(1)臨床進行期Ia期,(2)G1類内膜腺癌,(3)medroxyprogesterone acetate(MPA)投与の禁忌を有していない,(4)年齢40歳以下,(5)ホルモン療法の限界について十分なインフォームドコンセントが得られている,としている.この症例では,(1),(2),(4)はクリアしている.(3)については,肝機能,血液凝固能を調べる必要がある.(5)のホルモン療法の限界は,自験例の成績を用いて患者のみならず家族にも十分説明する.「MPAによる妊孕能温存療法を受け,2年以上経過した症例は29例である.18例(62.1%)で癌が消失したが,うち5例は再発したため,MPAのみで癌が治癒している症例は13例(44.8%)のみである.13例中妊娠した症例は6例である.病変の消失までには少なくとも20週間はかかり,通常は半年以上のMPA内服が必要である.MPA療法中にリンパ節などに転移を来たした症例が2例あり,うち1例は現在も化学療法を施行している.一方,臨床進行期Ia期,G1類内膜腺癌であれば,手術のみでほぼ100%の治癒が期待できることから,ホルモン療法は手術より優れた治療法とはいえない.」以上が十分了解されれば,妊孕能温存療法の対象として治療を開始する.
 治療開始前には,全身の検索と同時に,子宮鏡で病変の局在を確認し全面掻爬を施行する.組織学的に低分化腺癌成分の共存がないことを確認するために必須の検査と考えている.MPAは600mgを連日経口投与し,4週ごとに内膜細胞診,組織診,経膣超音波で経過を追う.3ヶ月に1回,子宮鏡と全面掻爬を施行する.病変が完全に消失したら,2ヶ月ほど高用量MPAを追加し,終了後はMPA 10mgまたはピルを用いて周期的な出血を起こさせる.既婚症例では,排卵の有無に関わらずリプロダクションの専門外来を受診させる.再発のリスクを抱えた治療なのでできるだけ早く妊娠させる必要があり,また多くの症例が排卵障害を有しているため専門医による排卵誘発が必要だからである.未婚ですぐには妊娠を望まない症例には,排卵誘発を施行せずピルを継続的に処方して,無排卵から来るunopposed estrogen環境に陥らせないように努める.なお,自然排卵してくる症例も経験されるので,基礎体温の測定は必須である.高用量MPA処方中も,終了後も,悪性腫瘍の経過観察と同様に画像診断を施行するが,内膜の厚さの微妙な変化を簡便に観察するには経膣超音波が有用である.内膜細胞診,必要に応じて組織診による長期間の経過観察は必須である.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2) 142-143, 2005


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