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第109回学術集会(平成17年6月12日(日))
【ランチョンセミナー5】
57歳まで10年以上HRTを続けている.こんなときどうする.
小山 嵩夫
小山嵩夫クリニック
1990年頃から,わが国においてもHRTが普及しはじめた.1990年代前半に,40歳代後半でHRTを開始したグループにおいては,タイトルの様な症例にしばしば遭遇する.2002年に米国NIHからのWHI報告により,更年期医療の現場におけるHRTは少し腰が引けた状態になってきている. WHI報告がすべて正しいと判断すれば,今回のテーマの様な症例に対して,HRTは1〜2年のうちに中止するのが正解であろう.理由としては,5年以上のHRTは総合的にリスクの方がベネフィットより多い.HRTの適応は更年期障害と骨粗鬆症の予防および治療である.10年以上の更年期障害は考えづらいし,10年以上骨粗鬆症の治療を行なう場合は,リスクの点からもHRT以外を考慮すべきである.5年以上のHRTは,QOLの向上にも役に立たないし,乳がん,血栓症,心臓病,痴呆,尿失禁などに対してもリスクの方が多いなどである. WHIからみれば,今回のテーマの結論は以上のようであるが,WHIに対しても,いろいろな問題点が指摘されている.まず,研究対象が肥満体で,63歳からの5年間であり,生活習慣のあまりよくないグループである.HRTといっても,結合型エストロゲン0.625mgとMPA2.5mgの持続併用投与法1種類のみで検討しており,HRT全体を意味しているとはいえない.WHI報告は,二重盲検の大規模臨床試験であるため,その結果は,尊重されるべきである.しかし,根底となる研究計画自体に問題があるとすれば,その点については十分な配慮は必須である.とくに,WHI報告が,これまでの非常に多くの観察研究と結果が異なっている部分が多いだけに,慎重性が要求される. 今回のテーマについて,演者の結論は,きちんと管理されていて,投与目的もしっかりとしており,かつ服用者のメリットも確認されていれば,10年以上のHRTは,何ら問題はないと考えている.10年以上のHRTを行なうためには,HRTに関しての最新かつ正確な知識が必須であるのはいうまでもなく,更年期医療に従事する場合は,この領域の情報については,常に関心を持っていることが必要であろう.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2)
158-159, 2005
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