|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第109回学術集会(平成17年6月12日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩1 妊娠中に化学療法を施行し健児を得た悪性リンパ腫(NK細胞腫瘍)の1例
村中 愛, 岡 賢二, 近藤 沙織, 芦田 敬, 北 直子, 金井 誠, 小西 郁生
信州大学産婦人科
悪性リンパ腫の中でもnatural killer(NK)細胞腫瘍は,予後不良でほとんどが6ヶ月から1年で死亡に至り,妊娠合併例の報告は極めて少ない.今回妊娠初期に発症したNK細胞腫瘍に対して脾臓摘出術及び化学療法を行い,健児を得た症例を経験した.症例は22歳,0回経妊.前医にて妊娠確認されたが,妊娠初期より微熱と腹部膨満感を認めていた.健診時の血液検査にて,汎血球減少(WBC 1050/μl Hb 6.2g/dl Plt 31000/μl)がみられ,また巨脾を認めた.精査加療のため,妊娠14週で当院に搬送入院となった.確定診断のために妊娠15週に脾臓摘出術が施行され,脾臓は2450gで,病理検査にて悪性リンパ腫(NK細胞腫瘍)と診断された.妊娠継続の希望があり,十分な説明の上で同意を得て,妊娠中に化学療法を行う方針とした.CHOP療法を計6コース施行したが,妊娠30週にカリニ肺炎を発症したため治療を一時中断したところ,急激に状態が悪化し母体の生命が危険と判断した.救命のためsecond lineのDeVIC療法を導入し状態は改善した.その後,妊娠34週に陣痛発来し経膣分娩(2050g女児)となった.分娩・産褥経過は良好であった.分娩1ヶ月後に骨髄移植が行われ,3ヵ月後退院,以後外来通院管理となっている.近年,妊娠中に,妊娠を維持しつつ化学療法を行う症例が報告されている.治療は母体および胎児の状態を考慮し,慎重に行う必要があるが,時機を逸せず治療を行うことが母児の救命につながると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2)
169-169, 2005
|