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第109回学術集会(平成17年6月12日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩1 抗HPA-4a抗体保有妊婦の妊娠・出産―予想された同種免疫性新生児血小板減少症を発症しなかった症例―
太田 武雄, 渡辺 博, 保倉 宏, 岡崎 友紀, 庄田 亜紀子, 古野 元子, 岡崎 隆行, 多田 和美, 西川 正能, 田所 望, 稲葉 憲之
獨協医科大学産婦人科
われわれは,第2子が抗HPA-4a抗体による同種免疫性新生児血小板減少症(NAIT)と診断され,治療により軽快した経験のある女性の妊娠出産を経験したので報告する.症例は35歳 2-0-4-2既往歴・家族歴に特記事項なし.第1子は異常なく,第2子は出生翌日全身に小出血斑が出現,血小板数7000/μ/lのため他院NICUに搬送,血小板輸血とガンマグロブリン投与により良好な結果をたどった.その後2度の妊娠は担当医と相談しterminationしている.今回も周囲は反対していたが,出産を希望して当科受診された.ご本人の血小板型は日本人では1/10,000の頻度であるHPA-4b/4bであり,夫はHPA-4a/4a(日本人の99%以上),児は必然的にHPA-4a/4bとなり,母子間血小板型不適合のためご本人がHPA-4a(Yuk b)抗体を保有している事が判明していた.夫婦に対する数回の面談の結果,妊娠を継続することになった.妊娠の継続にあたり,臍帯穿刺による血小板数測定は希望されず,母親の抗血小板抗体値を測定しつつ胎児の状況を観察することになった.出産は分娩中の頭蓋内出血のリスクを考え,帝王切開を選択された.妊娠中の抗血小板抗体価は変動せず,M-MPHA法で3,200倍であった.妊娠39週0日HPA適合血小板準備下に予定帝王切開を行い,男児3000g Apgar 8/9点を出生した.予想に反して児の血小板数の低下は軽度で,最低値11.7万/μ/に留まったため,血小板は輸血せず,ガンマグロブリン投与のみで日令7母子とも退院となった.同種免疫性新生児血小板減少症の既往がある女性の次回妊娠において,必ずしも血小板減少のリスクが上昇するとは限らない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2)
170-170, 2005
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