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第109回学術集会(平成17年6月12日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩9 子宮動脈塞栓術(UAE)を行い子宮温存した妊娠14週自然流産後嵌入胎盤の一例
福井 詩子1), 古谷 健一1), 笹 秀典2), 松田 秀雄1), 吉川 智之1), 菊池 義公1)
防衛医科大学校産婦人科1), 防衛医科大学校分娩部2)
【緒言】癒着胎盤や嵌入胎盤はしばしば経験する疾患であるが,その対処に苦慮することも多い.今回,出血を伴う流産後の侵入胎盤に対し,UAEを施行し,子宮温存に成功した症例を経験したので報告する.【症例】34歳.2経妊1経産.近医にて妊娠14週で自然流産したが,流産24日後に性器出血持続.超音波検査で子宮内に腫瘤像認め,MRI所見にて筋層に侵入した胎盤遺残の疑いで,流産37日後に当院紹介となる.初診時,子宮腔内には非常に血流豊富な腫瘤を認めたが,血中hCGは8.7mIU/mlと低値を示し血管腫などの腫瘍性疾患も疑われた.一方,本人は腫瘤の原因解明と子宮温存を強く希望したことから,本人の同意を得て,性器出血の止血と安全な病理検索を目的としてUAEを施行した.左内腸骨動造影で,子宮動脈末梢に不整に拡張・蛇行した血管を認め,右子宮動脈造影では筋層が不整に造影され,両側の子宮動脈を塞栓した.UAE後は出血少量となり,超音波所見でも子宮内腫瘤への血流は認めなくなった.UAE後3日目に,子宮鏡下に子宮内腫瘤を生検した.子宮内は前壁から豊富な血管を有する変性した絨毛様の組織が腫瘤槐を形成していた.病理検査では,壊死性の組織を含む絨毛様構造が認められ,遺残胎盤であったと考えられた.UAE後15日目に子宮内の遺残胎盤が自然娩出され,その後正常な月経が再開した.【結語】本症例では嵌入胎盤以外に血管腫などの腫瘍性疾患も疑われ,診断に生検を必要としたが,血流豊富な組織に対し事前にUAEを行うことで,より安全で低侵襲な生検が可能となった.子宮温存を望む症例においては,UAEや子宮鏡下手術は有用な方法と思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2)
208-208, 2005
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