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第109回学術集会(平成17年6月12日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩10 術前に穿通胎盤を予期し得た前置胎盤の1例
高橋 晃, 伊藤 茂, 中尾 佳月, 薪田 も恵, 山田 美恵, 米本 寿志, 中村 靖, 木下 勝之
順天堂大学産婦人科
(緒言)帝王切開既往妊婦の前置胎盤症例では,帝王切開瘢痕部への癒着胎盤を起こしやすい.このような症例では帝王切開中の大量出血を来たし,子宮全摘を余儀なくされることも稀ではない.これらの事から,分娩前の評価は非常に大切であり,相応の準備をして帝王切開術に臨むことが重要と考える.今回我々は,術前に侵入胎盤を疑った全前置胎盤の症例を経験したので報告する.(症例)患者は41歳で3経妊2経産,前2回の出産は帝王切開であった.妊娠28週頃より不正性器出血を繰り返し,経膣超音波にて全前置胎盤の診断で,入院管理となった.前壁付着の全前置胎盤であり,前2回帝王切開の既往から癒着胎盤の可能性を考慮し,妊娠31週でMRI検査,妊娠32週に膀胱鏡検査を施行した.MRI上,胎盤付着部の子宮前壁筋層がひ薄化し一部断裂の所見が認められた.また,膀胱鏡にて,膀胱三角部の発赤と膀胱後壁の血管怒張を認めたが,粘膜は正常所見であった.以上より侵入胎盤もしくは穿通胎盤を疑い,自己血に加え輸血の準備及び子宮全摘の準備を行い,妊娠34週に陣痛発来したため帝王切開試行した.開腹時,子宮前壁より胎盤が透見される状態でその周囲の血管も怒張していたため胎盤剥離は困難と考え,子宮全摘術も併せて行った.膀胱損傷の合併症は起きたが,術後母児共に経過は順調であった.(結語)癒着胎盤のハイリスクと考えられる症例では術前評価が重要であり,スタッフの確保や相応の準備行って手術に臨むことで,より安全に手術が行えると考えられた.術前評価に,MRI,膀胱鏡は非常に有用と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2)
237-237, 2005
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