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第109回学術集会(平成17年6月12日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩10 長期胎盤遺残の1例
中村 学, 久保 祐子, 斉藤 麻紀, 宮本 純孝, 富田 初男, 安藤 昭彦
さいたま赤十字病院産婦人科
癒着胎盤は4,000〜7,000の分娩に1例の割合で起こるとされ,多量の出血を伴い,感染,DICを合併しやすい.そのため従来早期の単純子宮全摘出術が行われてきた.しかし,近年は妊孕性温存の希望が増加しており,化学療法による保存的治療が増えてきた.今回我々は,分娩時,胎盤の用手剥離が困難で,臨床的に癒着胎盤と考えられた症例をメソトレキセート(MTX)の筋注療法を施行し,産褥95日目に胎盤を自然排出し,子宮を温存できた症例を経験したので報告する.症例は38歳の0経妊0経産の初産婦.高齢妊娠のため妊娠16週で羊水穿刺の検査を前医で受けている.妊娠29週に転居のため当院に転院.妊娠経過中に異常はなかった.妊娠40週4日,自然陣痛発来後に正常経腟分娩にて児を出産した.胎盤剥離徴候を認めないため,用手的に牽引したが剥離する傾向はなく,全胎盤が遺残した.自然経過を見ていたが,胎盤の娩出がないため,産褥7日目よりMTX20mg/日の5日間筋注投与を2週おきに施行した.当初3クールで終了予定であったが,患者の要望があり,さらに2クール追加して,計5クール施行した.血中hCG-βサブユニットは4クール終了後に陰性化した.産褥95日目に軽い腹痛を伴い胎盤を自然排出した.娩出した胎盤は47gで,病理組織検査では変性した胎盤組織であった.出血はほとんど無かった.癒着胎盤で出血,感染がなければ,器械的治療を施さず,長期に待機することも可能と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2)
239-239, 2005
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