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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【教育講演1】
子宮内膜癌研究の最前線〜エストロゲンと子宮内膜癌〜
塩沢 丹里
信州大学産婦人科 助教授
子宮内膜癌は近年著明な増加を示し,その生物学的特徴のさらなる解明が待たれる代表的な腫瘍の一つである.子宮内膜腺上皮や内膜癌はエストロゲン受容体を有し,エストロゲン依存性増殖を示すことから,このステロイドホルモン依存性こそが内膜癌の腫瘍学上の極めて重要な特性であると考えられる.しかしながら,正常内膜腺上皮や内膜癌のエストロゲン依存性増殖の分子機序,さらには内膜癌発生におけるエストロゲンの関与に関しては不明な点が多い.今回我々は正常子宮内膜腺上皮および子宮内膜癌の増殖機序を特に細胞周期調節因子の観点から検討し,正常内膜腺上皮のエストロゲン依存性増殖においてはAP‐1を介したサイクリンD1の発現が,また内膜癌のエストロゲン依存性増殖においてはIGF‐1およびMAPK経路を介したオートクリン/パラクリン機構が重要であることを見出したので報告する.さらに,子宮内膜癌の初期の遺伝子変異にはミスマッチ修復異常が高頻度に合併していることから,ミスマッチ修復機能とエストロゲンの関係を検討したところ,高エストロゲン環境はミスマッチ修復活性を高めることを見出した.これはエストロゲンが内膜癌発生における一種の生体防御因子として機能していること示唆する所見である.今回の講演ではミスマッチ修復機構からみたエストロゲンの内膜癌発生抑制作用についても報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
284-284, 2005
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