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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【シンポジウム2】
5.がん化学療法とエリスロポエチン
佐藤 豊実
筑波大学産婦人科 講師
卵巣癌化学療法中の患者に発生する貧血は,患者のQOLを損なう要因の1つである.卵巣癌の初回化学療法は現在TJ療法が標準治療である.この,初回治療中の貧血発生の頻度はNIC‐CTC Grade 1,2が51%,Grade 3が2%との報告がありそれほど高くない.再発患者に対しては種々の抗癌剤が投与され,治療は継続的あるいは断続的に行われ貧血の程度は高くなる.貧血は徐々に進行し患者も慣れてしまい慢性的な疲労感などとして自覚していながら,症状として訴える事は少ない.輸血により貧血が改善すると体が楽になり貧血による症状であったのかと気がつく事がまれではない. 欧米ではがん化学療法に起因する貧血に一般的にエリスロポエチン製剤が用いられ,QOLを向上させている.欧米では化学療法に伴う貧血に対するエリスロポエチン製剤使用のガイドラインが作製されておりHb 12〜13 g/dlを目標としている.投与量は週1回40,000 IU投与が推奨されている.本邦ではエリスロポエチン製剤の卵巣がん患者を含むがん治療に伴う貧血患者を対象とした第III相一般臨床試験が行われ,現在データの解析中である.これに先立ち行われた肺がんと悪性リンパ腫患者を対象とした第II相試験では,週1回9,000 IU,18,000 IU,36,000 IU投与がdouble blind RCTで行われた.有害事象に用量依存性がなく36,000 IUでは輸血症例がなかったことから36,000 IUが推奨される事となった. 一方,エリスロポエチン投与群と非投与群の比較で投与群のがん患者の予後が不良であったとの報告が出されている.この報告には議論があり,今後のstudyの結果を待つ必要があると考えられている. 海外の使用報告,ガイドライン,投与群予後不良の報告に関する議論を紹介する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
297-297, 2005
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