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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【シンポジウム2】
6.卵巣癌に対する分子標的治療・遺伝子治療の展望
高野 貴弘
自治医科大学産婦人科 助手
卵巣癌を対象とした臨床試験の始まった分子標的治療を概説し,併せて我々が研究している血管新生を標的とした分子標的治療およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療の研究について報告する. 卵巣癌に対する分子標的治療の治験の主なものは,上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とするgefinitib(Iressa)(PII/III),erlotinib(Tarceva)(PII/III),celuximab(Erbitux)(PII),KIT‐TK阻害剤のimatinib(Glivec)(PII),プロテアソーム阻害剤のbortezomib(Velcade)(PII),HER2阻害剤のperzumab(Omnitarg)(PII),抗CA125モノクローナル抗体であるoregovomab(OvaRex)(PIII),抗VEGFモノクローナル抗体であるbevacizumab(Avastin)(PII)等があげられる.これらのうちOvaRexは,生存期間に有意な延長をもたらし,また,Avastinは,単独投与で17.7%の奏効率が得られている.また,本邦で開発,臨床試験が進んでいるbikuninは,抗癌剤との併用により,生存期間に有意な延長をもたらした.一方,遺伝子治療に関しては,アデノウイルスベクターによるp53遺伝子導入の臨床試験がPIIIまで進んだが効果なく中止となっており,その他についても未だpreclinicalな段階にとどまっている. 我々は,sFlt‐1およびIL‐10には血管新生抑制を介して卵巣癌の腹膜播種を抑制する作用のあることを見いだし,これらの因子を用いた腹膜播種を標的とした分子標的治療の研究を遂行している.さらにこれらの因子をAAVベクター化し卵巣癌腹膜播種マウスに投与し,血管新生抑制,腹膜播種抑制を確認し,遺伝子治療の可能性を模索している. 昨今,種々の分子標的治療薬が開発されているものの,単剤での効果は乏しく,抗癌剤や放射線療法との併用が考慮されている.また,対象の特定,有害事象の詳細な検討など課題が多く残されている.しかしながら既存の抗癌剤にはすでに限界が見られている現状においては,分子標的治療・遺伝子治療へ寄せる期待は大きい.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
298-298, 2005
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