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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【招請講演】
医療事故発生時の適切な対応
藤井 恒夫
日本産婦人科医会医療安全・紛争対策委員会委員 広島県医師会医療事故特別委員会委員 ひさまつ産婦人科医院
近年,医事紛争は増加の一途であり,医療事故が生じた場合に医療過誤はなくても紛争が起きる場合もある.産婦人科領域では患者側から1億円を超える高額な請求も少なくなく,今後は勤務医が求償されるケースも増えてくると思われる.複雑化する社会医療環境のなかで医療に対する患者側の意識は大きく変化しており,医療事故発生時の適切な対応が必要である. 広島県医師会には医事紛争に対応するために昭和38年2月に医療事故特別委員会が設置され,平成13年1月に取り扱い事案件数が1,000例に達した.事案発生診療科上位4は外科の240件,内科の218件,産婦人科の203件および整形外科の125件であった.最近10数年の産婦人科医療事故上位4は分娩に伴う児の障害(37.5%:うち1/3が脳性麻痺,1/3が児死亡),ついで母体の障害(20.0%),外来診療事故(20.0%:うち半数が診断),産婦人科手術事故(15.0%)であった. 医療事故発生時の対応としては,急変発生時,死亡事故発生時には医療者側が連携して速やかに家族への連絡と経過等の説明を行い,患者側からのクレームには窓口を一本化し,複数の人員で面会して冷静に対応することが肝要である.広島県医師会では患者側からクレーム・賠償請求があったとき,会員は医療事故特別委員会に報告する.委員会は医療内容を検討して処理方針を決定し,必要に応じて日医医賠責保険に付託,あるいは保険審議会に報告し,解決を目指す.裁判では鑑定結果,意見書と適切な臨床論文が証拠として重要であり,不妊治療中に発生した漿液性卵巣癌の事例では不妊治療中に発見された卵巣癌症例を集積した小西郁生教授らの論文が判決に影響した. 医療事故・紛争を防止するためには,インフォームド・コンセント,セカンドオピニオンの勧めなどで患者側に積極的に情報を提供するとともに,インシデント報告の共有化,前医と後医との連携,患者側と医療者側との信頼関係を構築する努力が重要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
300-300, 2005
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