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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍(1) 周術期管理に苦慮した高齢者巨大卵巣腫瘍の一例
志村 玲奈, 沖 明典, 安倍 梓, 豊田 真紀, 中尾 砂理, 山中 明香, 南 里恵, 佐藤 奈加子, 佐藤 豊実, 角田 肇, 吉川 裕之
筑波大学産婦人科
巨大卵巣腫瘍は良性であっても周術期管理が問題となるが,今回88歳と高齢婦人症例を経験したので報告する.症例は88歳8経妊7経産婦.10年前より腹部腫瘤感を自覚していたが放置していた.2,3年前より腹部膨満が増強,歩行困難となり前医受診し巨大卵巣腫瘍を指摘され,精査・加療目的にて当院紹介となった.腹囲120 cm,横隔膜を挙上する30x27x28 cmの2胞性嚢胞性腫瘍でCA125値は67.1 IU/ml,長期の経過から良性〜境界悪性腫瘍が疑われた.PS:2,術前検査では心・肺機能は問題なく深部静脈血栓症も指摘されなかった.術前に麻酔科とのカンファレンスを行い,呼吸・循環動態の変動を極力避けるべく,左側臥位局所麻酔下小切開開腹の後,腫瘍内容を緩徐に穿刺吸引してから仰臥位に体位変換し挿管全身麻酔管理とした.その後両側付属器切除+子宮腟上部切断術+大網部分切除術を施行した.術前のCT断面積の積算による推定腫瘍内容量は18.1L,実際はserousな内容が16.3L吸引された.術後はICU病棟に収容し血圧の変動と低アルブミン血症に伴う肺水腫に注意し管理した.5PODには歩行可能となり,リハビリを進めて23PODに退院した.病理検査結果はserous papillary cystadenomaだった.巨大卵巣腫瘍の症例では術中の腫瘍による圧迫が急激に解除された後に起こる急性循環不全や術後の肺塞栓症・肺水腫などのリスクが高いといわれている.本症例では特に高齢で寝たきり状態であり,よりハイリスクな周術期管理が要求されたが,十分なリスク評価とそれに対する対策及び他科との連携により合併症を併発せずに治療を行い得た.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
320-320, 2005
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