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第115回学術集会(平成20年6月15日(日))
【一般演題】
奨励賞候補演題I 分娩後出血性ショックに対する大動脈閉塞バルーンカテーテルの使用経験
梅津 桃, 増田 健太, 後藤 優美子, 中林 章, 青野 一則, 秋葉 靖雄, 渡邉 豊治, 小西 康博
社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院産婦人科
産科領域における出血は短時間で大量に生じ,ときに出血性ショック,DICに至ることがある.今回,鉗子分娩後に後腹膜血腫を生じ,出血性ショック,産科DICとなった症例に対し,術中バイタル変動や出血を減少させる目的で大動脈閉塞バルーンカテーテル(Intra-Aortic Balloon Occluder:IABO)を使用した症例を経験した. 症例は35歳初産,前医にて鉗子分娩により児が娩出された.腟壁裂傷とそれに伴う出血に対する縫合が施行されたが,分娩から5時間後,血圧低下を認め当院へ救急搬送となった.来院時BP 69/53,Hb 3.3g/dlとショック状態,産科DICであった.造影CTにて骨盤腔全体を占める後腹膜血腫と活動性出血の持続を認め,ただちに緊急開腹手術となった. その際,開腹による閉鎖腔の開放に伴う急激な出血量の増加と血圧の低下を予想し,術前にIABOを腎動脈の高さに挿入した.手術開始直後にバルーンを拡張し大動脈の血流を遮断した状態で開腹,左傍腟結合織の静脈叢からの出血を確認して縫合止血操作を加えた.30分後血流遮断を解除したところ,同部からの出血は増加したが,手術中を通してバイタルは急激に変動することなく手術を終えることができた.術中総出血量は11290mlであった. 今回我々は,IABOを使用することにより,術中バイタルを変動させることなく,また出血量を軽減させることができたと考えられた.IABOはX線透視を必要とすることなく簡便に挿入できる器具であり,腹腔内出血にとどまらず,前置胎盤や癒着胎盤などの産科領域における大量出血が予想される症例に対して,IABOの使用は有効である可能性があり,今後検討を重ねたい.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(2)
122-122, 2008
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