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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))

【シンポジウム3】
婦人科癌における緩和医療
婦人科がんにおける疼痛緩和の実際


的場 元弘
国立がんセンター中央病院緩和医療科医長


 婦人科領域のがん性疼痛に対する対応の基本は,他のがん種の場合と同様に,疼痛の訴えが患者から発せられるのを待つのではなく,“痛みはありませんか”,“痛みで生活に支障がありませんか”と積極的に尋ねることから始まる.痛みの治療のゴールは,疼痛による日常生活への支障や疾患への不安を軽減することにあり,本人に尋ねることでのみ改善が十分かどうかを知ることができる.
 疼痛が明らかになれば,WHO方式がん疼痛治療法に従って,効果や副作用に注意しながら十分な鎮痛が得られるまでの増量を行うが,疼痛治療の主軸となるモルヒネやオキシコドン,フェンタニルの使用に当たっては,副作用対策が必須であり,特にオピオイド鎮痛薬では予防的な嘔気・嘔吐対策や,便秘対策が必須である.副作用対策が奏功しない場合や,鎮痛効果が得られない場合などでオピオイドローテーションが検討される.
 難治性の疼痛に対しては,鎮痛補助薬はいずれの時期にも用いられるが,オピオイドの投与を避けるための薬剤ではなく,非ステロイド性消炎鎮痛薬やオピオイドに反応しない疼痛が適応の基本である.鎮痛補助薬の漠然とした使用は副作用が前面に出ることになり,目的が明確な場合以外には使用するべきではない.
 婦人科領域のがん性疼痛において注意すべきものとしては関連痛がある.子宮や卵巣に病変がある場合の関連痛は,侵害刺激を脊髄に入射する脊髄レベルが第11胸髄〜第2腰髄と広範囲であることから,離れた部位に疼痛を訴える場合がある.また,この脊髄レベルの支配を受ける,運動神経や交感神経の遠心路を介して,腹壁の筋収縮をそれに伴う圧痛や,発局所の発汗や冷感,立毛筋の収縮などを認める場合がある.また,膀胱や直腸周辺への浸潤によってテネスムス症状や,肛門周辺への難治性疼痛を生じることが少なくない.これらの症状に対しての確立した治療はないが,近年ガバペンチンの有効性について検討が行われている.がんが外陰部周辺に広がった場合には,びらんに尿が接触することでの疼痛が問題となる.この症状は膀胱膣瘻などでさらに顕著となり悪臭も伴うことから,対応に難渋することも少なくない.
 本シンポジウムにおいてはこれらの問題に対しても症例を交えながら治療の考え方や工夫について提示したい.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2) 136-136, 2009


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