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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))

【シンポジウム3】
婦人科癌における緩和医療
緩和ケアと漢方


木下 優子
日本大学医学部付属板橋病院緩和ケア室室長


 〔はじめに〕漢方治療ががん治療のQOL改善に効果があることはすでに知られているところである.それだけではなく,症状緩和においても漢方治療は有効で,緩和ケアにおいて重要なツールのひとつである.日本大学医学部附属板橋病院では外来でのがん治療はもちろん,平成15年の緩和ケアチーム発足時より,チームに東洋医学科の医師が加わり,緩和ケアの一環として漢方治療を行ってきた.具体的には,一般医師に向けての院内の症状緩和マニュアルへの漢方治療の収載,個別のコンサルテーション,外来での診療である.
 〔緩和ケアでの漢方薬の使い方〕マニュアルおよび依頼内容としては全身倦怠感,免疫力増強,食欲不振等が多く,それについで,副作用や随伴症状の軽減(嘔気嘔吐,吃逆など)が多い.全身倦怠感では十全大補湯(じゅうぜんだいほとう),十全大補湯は化学療法・放射線療法の副作用軽減にも(治療開始前(できれば2週間以上)より内服)用いられる.食欲不振では補中益気湯(ほちゅうえっきとう)がよく用いられる.食欲不振に嘔気を伴う場合には,胃の入り口でつかえてうまく入っていかないときの茯苓飲(ぶくりょういん),胃もたれ感が強い・胃の中に物がたまって出て行かないときの六君子湯(りっくんしとう)などがある.化学療法中の副作用については,下痢では半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう),啓脾湯(けいひとう),手足の末梢の痺れでは牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が有名である.イレウスによる便秘およびオピオイドによる便秘に大建中湯(だいけんちゅうとう),吃逆に呉茱萸湯(ごしゅゆとう)または芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう),悪夢に桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)と様々な場面で漢方薬は用いられている.
 〔まとめ〕漢方治療は患者の苦痛軽減やQOL向上に大きな役割を果たす可能性がある領域である.また漢方治療することで西洋医学的治療の継続が可能な場合もあり,緩和ケアにおいて重要なツールになると考えられる.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2) 138-138, 2009


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