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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))
【教育講座】
新しくなった「ベセスダシステム2001準拠子宮頚部細胞診報告様式」の実際
平井 康夫
癌研有明病院婦人科副部長(細胞診断部兼務)
現在まで,日本で使用されてきた子宮頚部細胞診判定の報告様式は,パパニコロウ分類を一部改変した日母(日本産婦人科医会)細胞診クラス分類であった.日母分類では,細胞診結果をクラスIからVの5段階に分けて評価,報告してきた.パパニコロウ分類は1941年に提唱され,1954年にパパニコロウ本人によって改定された.この分類には異型や悪性所見の定義はなく,細胞所見の分類ではなく,判断基準を示したものであった.日母がん対策委員会はパパニコロウ分類に細胞病理学的所見やそれに基づいた臨床的判断を盛り込んだ細胞診クラス分類を作成し(1973年),研修ノート「子宮がん検診」に公表(1978年)した.その後,この分類は1983年「老人保健法による保健事業の実施について」の厚生省通知において,「細胞診の結果は細胞診クラス分類(I,II,IIIa,IIIb,IV,V)によって分類する」と記載され,広く検診の現場で使われてきた.この「日母分類」は細胞診の判定だけでなく,臨床的判断基準を示したことが特長であった.また数値化しにくい形態学にあえてクラスI,II・・・という数値をとり入れ,判定としたため,使い勝手がよく,本邦で広く受け入れられてきた. 一方,海外ではほとんどの地域で1988年にアメリカで作成されたベセスダシステムに基づいた,子宮頸部細胞診報告様式が現在用いられ,クラス分類は既に公的には使用されてはいない.ベセスダシステムは2001年の大幅改定を経て,より実用的に進化した.その要点は細胞診の周辺領域における新規技術の発展を取り入れ,特に「子宮頸部病変におけるHPVの関わり」をエビデンスとして考慮したことにある.ベセスダシステムでは次の2点が当初から重視され,改訂後も引き継がれている. (1)記述的判定を取り入れる(パパニコロウクラス分類は廃止する) (2)標本の適否の評価を記載する 昨年(2008年)度の厚生労働省から各市町村にあるべき検診の仕様を示す指針では,はじめてベセスダシステムによる報告を許容することが示された.日母クラス分類の元々の策定母体である日本産婦人科医会も,昨年(2008年)6月の総会で「べセスタシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式」の採用を承認し,その普及のために全会員にべセスタシステム2001の解説小冊子を配布した.従って,現在全国規模で急速にベセスダシステムが普及しつつあり,今後更に行政検診の場でも徐々にベセスダシステムの併用が広まることが期待される現況にある. 本講座では,ベセスダシステム2001に準拠した子宮頸部細胞診報告様式運用の実際を,癌研病院でのベセスダシステム報告の経験から細胞像を交えて解説する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2)
140-140, 2009
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