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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))

【一般演題】
分娩1 胎盤
既往歴のない癒着胎盤の一例


八木 知子, 櫻井 信行, 立岡 和弘, 岩崎 真也, 松本 光之
静岡市立清水病院産婦人科


 【緒言】癒着胎盤とは胎盤の絨毛が子宮筋層内に侵入し,胎盤の一部または全部が子宮壁に癒着して胎盤の剥離が困難な状態を言う.今回われわれは,帝王切開や子宮内膜掻爬術などの既往のない妊婦に発症した癒着胎盤を経験したので文献的考察を加えて報告したい.【症例】症例:32歳,1経妊1経産(第1子正常経腟分娩),既往歴:特記すべき事なし,現病歴:当院にて妊娠初期より経過観察をしていた.妊娠16週より前置胎盤を認めていたが,32週の健診時には前壁付着胎盤となっていた.骨盤位のため選択帝王切開の予定であったが,妊娠36週3日,前期破水のため緊急帝王切開を行った.胎盤娩出時,胎盤の一部が子宮から剥離せず,子宮内に胎盤の一部を残した状態で閉創した.術中出血は2200mlで,濃厚赤血球3単位および新鮮凍結血漿を4単位輸血した.術後,子宮からの出血が持続しDICとなったため,本人およびご家族の同意を得て,同日に再手術を行い,子宮を全摘した.摘出子宮には,子宮底部から前面にかけて癒着した胎盤が残っていた.病理学的には,脱落膜が欠如して胎盤が子宮筋層に直接,接する楔入胎盤(placenta accrereta)の所見であった.術中出血は約1000mlで,濃厚赤血球8単位および新鮮凍結血漿4単位を追加輸血した.術後経過は良好で,術後8日目に退院となった.【考察】今回,既往歴のない妊婦に発症した癒着胎盤を経験した.既往歴はなくとも,前置胎盤は癒着胎盤のリスク因子であり,前置胎盤の状態がたとえ妊娠後期までに改善したとしても,癒着胎盤の存在を念頭に置くことが重要であると思われた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2) 145-145, 2009


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